「日照も眺望も奪われる」隣地に31㍍マンション計画 京都市の高さ規制緩和が引き金に/京都市右京区葛野地域

住民ら計画見直し訴え「京都市は責任持って指導を」
京都市右京区葛野地域に高さ31メートル、11階建て、94戸の大規模マンション計画が進められ、計画地の北側にある既存マンションの眺望や日照を奪うことから、大問題となっています。高層マンション計画は、市が一昨年に行った都市計画の規制緩和が引き金となったもので、住民らは市の責任ある指導と業者の計画見直しを求めて、粘り強い運動に取り組んでいます。
計画地は、阪急西京極駅から北西に徒歩15分ほどの場所。元はあられやおかきを扱う店舗・工場などがあった土地で、ヤマイチ・エステート(大阪府)が購入。敷地面積約1660平方メートルにマンションを建設する計画を進めています。
ところが、計画地のすぐ北側には既に、高さ20メートル、7階建て、81戸、ほとんどが南側にベランダがある分譲マンションが建っています。このマンションの境界線からわずか40センチのところに高さ約10メートルの立体駐車場が設置予定です。建設されれば日照や眺望、風通しがさえぎられることになります。
シミュレーションでは、冬季には日照時間はほぼゼロになる住戸も出てくることが判明しています。

高さ制限20㍍だったのが…
もともとこの計画が現実化したのは、市の高さ規制緩和でした。市は2023年4月、景観保全のため厳しい規制を引いてきた新景観条例の見直しを実施。計画地一帯は、高度地区31メートル第3種が同第9種に緩和されました。
そのため、工場・事務所や店舗、飲食店などを併設した建物以外は高さ20メートルに制限されていたのが、一定の条件のもとに共同住宅であれば、高さ31メートルまで可能となりました。
昨年9月、計画を表示する標識が立ち、計画の概要を知らせるチラシが各ポストに配布されたことで計画を初めて知った分譲マンション住民らは、計画の見直しと市の指導を求め、「おかき屋跡地マンション建設計画見直し要請の会」を結成。対策を進めてきました。
市に対しては、「市長への手紙」を出したのをはじめ、今月16日には680人分の署名を提出。インターネット署名では、5341人分を集めています。市議会には、事業者への指導を求める請願を提出し、4月に全会一致で採択されています。

しかし、市は「違法性がなく、強制力はない」との一点張りで、まともな指導は行っていません。事業主も、社の方針に「地域とそこに住む人々の幸せを追求する」とうたいながら、利益第一主義に徹し、計画変更には応じていません。駐車場の入り口は変更したものの、地下駐車場への変更を求める住民の要望に対しては「地下にすればコストがかかる」と拒否。階数削減の要求も、「事業の根幹に関わる部分」「日照は問題ない」として、一蹴しました。
建築紛争調停を住民ら申し立て
昨年12月には、これ以上の話し合いはできないと説明会を一方的に打ち切りました。
現在、住民らは市の建築紛争調停委員会に調整の申し出書を提出し、調停の最中です。一方、事業主は建築確認申請を行い、先月には工事を始めています。
「会」の中心となっている女性(44)は、「2階のベランダから空を見るのを楽しみにしている子どもに望遠鏡を買ってあげたのに。窓を開ければ目の前が立体駐車場で、子どもの楽しみや日照が奪われるかと思うと、説明会の時には泣き出してしまいました。業者だけでなく市にも責任があるはず」と怒りをあらわにします。
7階に住む78歳の女性は、眺望、日照が魅力でついの住み家として分譲マンションを購入したと言い、「違法でないなら何をやってもいいのでしょうか。企業として地域の住環境を守る、社会的責任を果たしてほしい」と言います。
「会」では、「このまま泣き寝入りできない。世論にも訴え、引き続き計画見直しを求めていく」と話しています。