「誰もが自分らしく生きられる社会実現へ、ジェンダー平等が大きく前進する1年にしたい」――。日本共産党京都府委員会のジェンダー平等・人権委員会事務局長で、衆院近畿ブロック比例候補のたけやま彩子さん(49)と、大阪市内で弁護士同士の夫夫(ふうふ)カップルで弁護士事務所を営む南和行さん(44)が、オンラインで新春対談しました。

民法に「明治」の残滓が■南さん

「後進国」の改善は急務■たけやまさん

 たけやま彩子 初めまして。新年明けましておめでとうございます。今年は総選挙の年です。衆院近畿ブロック比例の候補者として、「私たちの願いが届く政権を市民と野党の力で実現させよう」と決意を新たにしています。よろしくお願いします。

 南和行 こちらこそよろしくお願いします。実は共産党との付き合いは古いんです。子どもの時、自宅に「しんぶん赤旗」の日曜版が届いていたので、僕も読むのを楽しみにしていました。

 たけやま そうなんですか。

  弁護士になってからは、僕が同性同士のカップルなのを公表していることもあり、地域の共産党の方から性的マイノリティーの方の人権について、学習会の講師を依頼されたり、共産党の議員の方とも親しくさせてもらっています。立憲民主党や公明党にも親しい方がいますが、共産党の真面目さが、好きなんですよね。

 たけやま ありがとうございます。今日、お話ししたいと思うのは、日本のジェンダー平等の立ち遅れをどう改善していくかということです。

 日本の男女格差、ジェンダーギャップ指数は、世界153カ国中121位(2019年、世界経済フォーラム発表)です。昨年には、性暴力に苦しむ被害者をおとしめ、女性を侮辱する自民党の杉田水脈議員の暴言もありました。個人の尊厳を守り、差別を許さないためには、政治の責任が大きいと痛感しています。

  本当にそうです。

 たけやま 日本共産党は昨年、16年ぶりに綱領を一部改定し、「ジェンダー平等社会」をつくることを初めて明記しました。この目標の実現のため、京都府委員会でもジェンダー平等・人権委員会をつくりました。

 共産党の組織自体にも不十分な点がありますし、女性の役員を増やしていくことも大事だと思っています。私はこの委員会の事務局長をしており、さまざまな女性団体や行政機関を訪問し、懇談をしています。聞かせていただいたご意見を踏まえ、党の政策を充実させたいと思っています。

  そうなんですね。ジェンダー平等実現に向けて、弁護士として痛感するのは、民法の問題です。そもそも、現在の婚姻制度は、憲法24条の「個人の尊重と男女の平等」に基づいています。ところが、戸籍制度が戦前から引き継がれていることなどもあって、新民法の中にその名残りがあるんですね。

 たけやま なるほど。新型コロナウイルス対策として、政府が一律10万円の特別定額給付金の受給権者を「世帯主」としました。そのため、世帯主からDVや虐待を受けている人たち、多くは女性ですが、受給できない状況が生じたんです。児童手当も、第1子より第2子以降はなぜか支給額が低いんですよね。

南さん・民法772条に問題の本質が■たけやまさん・法律が多様な実態と乖離

  民法問題として772条()を挙げる必要があります。これが日本の婚姻制度の問題の本質を象徴していると思っています。この条文は、戦後の民法改正においても、明治民法の規定がそのまま受け継がれているんです。

 たけやま 「明治」なんですね。

  はい。一つは妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。二つ目に、「婚姻の成立の日から200日を経過した後」または「婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子」は、婚姻中に懐胎したものと推定する。このため、夫が離婚してくれないまま、別の男性の子どもを生んだ場合、子の父親は法律上の夫となります。離婚しても300日以内に出産すれば、前夫の子どもとなってしまうんです。

 たけやま 法が、離婚や再婚の実情に合致していないんですね。

  そうなんです。だから、出生届けを出せない、無戸籍の子どもたちがいるんです。弁護士として、この無戸籍の案件をたくさん扱ってきましたが、現在、問題解決の手段は裁判しかないんです。明治時代と違い、いまはDNA鑑定など父親を確定する手段はあります。それなのに、裁判実務でも、DNA鑑定よりも民法772条にあてはまる案件かが優先されます。

 たけやま 同性カップルや事実婚など、多種多様な家族があって、どんな形でも不利益を被らないようにすべきなのに、法が認めて保護するのは、一つのあり様でしかない、という事ですね。(オンライン対談〈下〉に続く

 みなみ・かずゆき 1976年、大阪府生まれ。2009年、弁護士登録。同性パートナーとともに13年、大阪市で「なんもり法律事務所」を設立。共著で『僕たちのカラフルな毎日 弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記』。

「週刊京都民報」1月3日付より

訂正】 当初の記事では、「民法722条」(*の箇所と見出し)となっていました。正しくは「民法772条」です。(2021年1月25日午前11時追記)