瀬戸内寂聴 「憲法9条京都の会」の発足のつどい(6月29日、京都市下京区)での瀬戸内寂聴(作家)さんの発言(大要)を紹介します。
 歳だけは私が一番上だと思うんです。鶴見さんと同い年なんですけど、何カ月か私が先なんです。だから私がお姉さまであることは間違いございません。(会場、笑い)ありがとうございます。笑っていただいて。
 今日私がここに来てまず驚いたのは、車で来たんですが、これはちょっと集まりが悪いんじゃないかと思ってまいりました。それでも頑張らなきゃいけないと思っていたんですが、着いてみたら座席は満杯で立ってらっしゃる方もたくさんいらっしゃる。日本は棄てたもんじゃないと思いましたね。
 私は、ばたばたしていまして、ほとんど自分の時間がない生活をしております。みっともないと思うんですが、根が非情に優しくできていまして、頼まれたら断れない。断ったら困るんじゃないかと思いまして、鶴見さんのように自分は悪人だというふうに育てられたら楽だと思いますね。(笑い)
 51歳で出家いたしましたから、それ以後は仏様まかせという気になってとても気が楽なんです。仏様の教えの中に戒律がございまして、戒律というのは「これをしちゃいけない」ということを教えられてるんです。人間の守れないことばかり書かれているんですよ。嘘ついちゃいけない、お酒飲んじゃいけない、人のものとっちゃいけないとか、そういうのは守れないです。
 「嘘をついちゃいけない」といったって私は小説家でございますから、小説は嘘をいかに本当らしく書くかとうことが大事ですので。でも小説を書かないと私は耐えられないんです。宗教でお金をもうけたら最低ですからね。そうすると私は、小説を書くしかないんですよ。それでずっと小説を書き続けております。出家する時、もしも小説を書かせてくれなくなったらどうしようと悩んでました。しかしそれはその時のことだと思って出家いたしました。
 ですから、出家してからはお釈迦様のおっしゃることをを守らなきゃいけない。色々感じ取る中で一番重大な戒律は「殺すなかれ。殺させるなかれ」というのがございます。殺人はしちゃいけない、その手伝いもしちゃいけないということです。これひとつは、絶対守らなきゃいけないと私は思いました。