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西洋南瓜

西洋南瓜
セイヨウカボチャ【ウリ科カボチャ属】  幼い頃に祖母が作ってくれた南瓜料理は、大抵透きとおった甘い煮汁にひたひたと浸かった「おかぼのたいたん」だった。その頃の南瓜は、京都産で皮にごつごつとした凹凸のある小振りなものが主流だった。うっすらと白く粉を吹いた朱色の南瓜の味は、みんずりとして甘みもお味も薄かった。いつの頃からか、緑色の皮を持つ甘みの強いほくほくとした西洋南瓜に代わって「おかぼのたいたん」から煮汁は消えた。そして、食卓には欧米化したお料理のバリエーションが増えた。
 庭に芽生えた株は、生屑の再生をもくろんで庭に掘った大きな穴から生えてきた。そういえば、思い当たる節がある。あのときの南瓜の種だ。
 支柱を立てて貰えるわけでなくとも丈夫にどんどん育ち、庭を這うて次々と花を咲かせた。残念ながら、庭ではひとつの結実もみなかったけれど、黄色い花はひと夏じゅう目を楽しませてくれた。
 この南瓜の実、熟せば鉈で割るほど堅いのでナタウリの別名がある。包丁を入れる手には力を要する。しかし、甘い。これが、西洋南瓜の特徴。
 冬至の日に「おかぼのたいたん」を食べると風邪をひかないという慣習も京都では当たり前のように続けられている。こうした習わしの日に食べたくなるのは、やっぱり透きとおってうっすらと甘い煮汁にひたひたと浸かった京都産の「おかぼのたいたん」。祖母の手料理が懐かしい。
2009年7月31日 12:00 |コメント0
絵:杉本歌子 プロフィール
1967年2月13日、京都生まれ。京都芸術短期大学美学美術史卒。現在、京都市指定有形文化財となっている生家の維持保存のため、財団法人奈良屋記念杉本家保存会の学芸員・古文書調査研究主任に従事。植物を中心にした日本画を描いている。画号「歌羊(かよう)」。

受け継いだ京の暮らし 杦庵の「萬覚帳」

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