京都家裁の決定を受けて会見する、みきさん(今年3月)

 男性から女性へ戸籍上の性別変更を希望しているトランスジェンダー女性の、みきさん(仮名)=京都市=が、現在の婚姻関係を維持したまま変更を認めるよう求めている家事審判(「なんでうちらが離婚せなあかんの?」裁判)で、最高裁に特別抗告したことを弁護団がこのほど、発表しました。

「二者択一」強要は憲法違反

 戸籍上の性別の変更手続きを定める性同一性障害者特例法の要件の一つ「非婚要件」について、みきさんは、憲法で保障される性自認が尊重される権利(13条)や婚姻を継続する権利(24条)に反すると指摘。性別変更のために離婚するか、婚姻を続けるために性別変更を諦めるかの過酷な二者択一を強いるのは憲法14条にも違反すると主張しています。京都家裁で却下され、大阪高裁で抗告棄却決定(9月)を受けて、今回の特別抗告に至ったものです。

 大阪高裁の判断は、「非婚要件」の規定で望まない離婚を強いられることに「婚姻中の性同一性障害者の利益を制約する面もある」としつつ、異性婚を前提とする現行の民法の下で、性別変更を認めれば、婚姻秩序に矛盾が生じると指摘。「同性婚ができないのは性同一性障害者に限ったものではない」などと退けました。

 みきさんは、性自認や婚姻関係を継続する権利を巡り、自身の過去の傷や乗り越えて来た思いを言語化して、3000㌻超の資料を提出したと述べ、「伝えたい実態に一切触れず無視されたことが腹立たしく悲しい」と批判。また、婚姻の継続も性別変更も望む妻の意向ではなく、「配偶者」なるものの権利利益の保護の必要性を持ち出し、「非婚要件」を正当化した点に、「当事者の思いや事実を無視し、結論ありきで裁判官の気持ちを書いた決定文。司法制度の信頼を著しく失っている」と憤りを表明しました。

司法判断の積み重ねを無視した高裁決定

 水谷陽子弁護士は、高裁決定の問題点として、法律上同性のカップルが婚姻制度を利用できないことは憲法違反だという司法判断の積み重ねを無視して判断していると指摘。特別抗告の理由書を提出したことを報告しました。