北区上賀茂「カキツバタ」の景勝地守ろう 住民有志が署名運動 大田神社隣接地で再開発計画

大田の沢への地下水脈調査・保全を
京都市北区上賀茂の景勝地で、カキツバタの名所として親しまれる〝大田の沢〟。上賀茂神社の摂社「大田神社」境内の東側に位置し、古来から群生する野生のカキツバタは、国の天然記念物です。この沢の東側隣接地に外資系企業が再開発を計画し、地域住民が住環境を守る取り組みを広げています。
計画地は飲食店や結婚披露宴会場、日本庭園を有した「愛染倉」の跡地(約7200平方㍍)で、敷地に残る施設のリフォーム活用と専用住宅(鉄骨2階建)2棟の建設を予定。住宅2棟は、いずれも建築面積が約700平方㍍、延床面積1100平方㍍を超える大邸宅です。
再開発の動きを巡って昨年、住民有志が「大田の沢と杜、住環境を考える会」を結成。代表には、上賀茂神社に仕えた社家で神主筋の「賀茂七家」の一つ「梅辻家」の現当主・梅辻諄さんが就任しました。
同会は、隣接する工事によって、大田の沢に流れる地下水脈の断ち切れやカキツバタへの悪影響を心配するとともに、事業者に地域住民との話し合いを求め、共生できる住環境、上賀茂の景観を次世代に残そうと活動しています。
署名呼びかけ来観者も驚き
同会が業者や行政に働きかけを行い、施工に関わる4社が昨年10月、住民説明会を開き、建設計画の概要説明に至りました。会は4月末から、松井孝治京都市長宛の要望署名を開始。▽カキツバタが枯れる事のないよう施主・施工業者に水脈の調査、保全を指導▽「個人住宅」を宿泊施設として利用しない旨の協定書を住民と締結するよう指導▽景観保全▽埋蔵文化財の発掘調査─の4点を求めています。
カキツバタが見ごろを迎える4月27日、同会の住民らが大田の沢の周辺で、来観者に署名を訴えました。

毎年、観賞に訪れるという女性=京都市=は、「ここは、いろんな花が楽しめ、今はいい時期です。こんなところにまで開発計画があるんですか」と署名に協力。フランスから来た観光客も環境問題に関心を寄せて応じ、上賀茂神社につかえていた社家の子孫だという男性が署名用紙やチラシを持ち帰るなどの反響がありました。
同会事務局長の三木務さんは、「沢に隣接する住宅の地下駐車場計画はなくなったが、景観や住環境保全に関して、施主か施主代理人と住民との協定書は交わしておきたい」と話し、会の活動への賛同を呼びかけています。
京都市議会では日本共産党議員団が、まちづくり委員会や文教はぐくみ委員会で取り上げ、開発計画に関して住民の要望に沿い事業者との調整をはかること、文化財保護法に基づき天然記念物を保護することなど要請しています。