演奏後のカーテンコールで、今公演の特製Tシャツを着て、観客の拍手に応える(右から)石上、福川、長、上村、ベベラリ、篠﨑、幣の各氏

 京都出身のバイオリニスト石上真由子さんの60回記念となる自主公演「Enseble Amoibe」(アンサンブル アモイベ)が1月5日、京都市左京区の京都コンサートホール小ホールで開かれました。ベートーベンの作品を豪華メンバーで届けました。

 医師を志して京都府立医科大学を卒業し、医師免許を取得しましたが、幼少から始めたバイオリンの道に専念することにした石上さん。大学卒業後、渡欧。訪問先で出演した手作りのサロンコンサートに魅力を感じ、帰国1カ月後に第1回自主公演「Enseble Amoibe」を開催。自分で自由にプログラムを考え、好きなメンバーと共演することに醍醐味を味わい、自主公演を続けてきました。今回は、ベートーベンが1800年、ウィーンのブルク劇場で開催した初めての自主公演を再現するプログラムを組むことにしました。

 ブルク劇場の演奏会の演目は当時の記録によるとベートーベン作曲の交響曲第1番、7重奏曲変ホ長調作品20、ベートーベンによるピアノの即興演奏、モーツァルトの大交響曲(詳細は不明)など。

 交響曲第1番は、ベートーベン以前では絶対に使わなかった和音から始まり、当時では珍しかった管楽器を2本ずつ使う大編成としているなど革新的な構成。7重奏曲は全パートが主旋律を奏で、主旋律と競うように助奏するオブリガート伴奏も行うのが特長で、初期にベートーベンの代名詞となるほど人気を博した曲です。

 ベートーベンの時代の雰囲気を出すため、石上さんは、メンバーを選定。京都出身で東京都交響楽団首席奏者の篠﨑友美さん(ビオラ)、バッハ・コレギウム・ジャパンで活躍中の上村文乃さん(チェロ)、SWR(南西ドイツ放送)交響楽団団員の幣隆太朗さん(コントラバス)、東京フィルハーモニー交響楽団首席奏者のアレッサンドロ・ベベラリさん(クラリネット)、東京都交響楽団首席奏者の長哲也さん(ファゴット)、元NHK交響楽団首席奏者で現在、東京音楽大学准教授の福川伸陽さん(ホルン)に出演してもらうことにしました。

 演奏会当日は、交響曲第1番を、7人で演奏できるよう作曲家の内門卓也さんが編曲したバージョンで披露。個性的な弦楽器と、柔らかな管楽器の音色が溶け合います。このあと、石上さんが作曲家・松﨑国生さんに委嘱したベートーベンの即興演奏に代わる即興的無伴奏バイオリン曲を演奏。次々と主役が変わる7重奏では、各人の技量と魅力がいかんなく発揮され、後半にいくにつれて、奏者がのびのびと演奏を楽しむ雰囲気が客席まで伝わりました。

 アンコールは、十数年ぶりに書道を再開した石上さんが書いた字を配した白いTシャツをメンバー全員が着て登場。モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」の第1楽章でしめくくりました。