人手不足から1人当たりの訪問回数増

 介護保険などにかかわる京都市内の市民団体でつくる「よりよい介護をつくる市民ネットワーク」()がこのほど、コロナ禍での訪問介護事業所の現状をつかむため、アンケート調査をしたところ、人手不足から、ヘルパー1人当たりの訪問回数を増やすなどのしわ寄せが生じており、賃金引き上げやPCR検査の無料実施を求めていることが分かりました。結果をもとに、同ネットワークは先月、市議会各会派と懇談し、対策強化を求めました。

 アンケートは昨年8月10日~31日に実施。市内にある381カ所の訪問介護事業所のうち116事業所を抽出し、60カ所から回答を得ました。結果は今年3月、冊子にまとめられました。

 「昨年1月以降、退職・休職した職員がいる場合の理由」について、常勤職員、登録型ヘルパーのいずれの場合も、半数以上が高齢や精神面・体力的な限界を上げました。新たな人材確保ができず「困っていること」として、「管理者やサービス提供責任者にしわよせが起こった」が最多の84・1%、次いで50・0%が「ヘルパー1人当たりの訪問回数を増やした」と答え、窮状を訴えました。

 「介護崩壊を防止するための対策」として、最多の78・3%が「介護労働を見直し、介護従事者の賃金を上げる」と回答。次いで66・7%が「人手不足対策を強化する」、「介護報酬単価を抜本的に見直す」が61・7%と続きました。また、コロナ対策で「どのような対策が必要か」の問いに、「PCR検査が何度でも無料で受けられるようにする」が74・6%に上りました。


 同ネットワークは、アンケートから見える現状と課題として、ヘルパーの慢性的人手不足がコロナ禍で一層進み、「訪問介護事業所がさらに窮地に立たされている」と強調。いまこそ労働条件の改善のために、「介護報酬単価の底上げは不可欠」と訴えています。併せて、現場で働くヘルパーの命を守るため、「国や自治体が責任を持って感染対策を行うことが望まれる」としています。

 昨年10月、アンケート結果を基にシンポジウムを開催し、市へ提言書を提出。今年4月には、初めて市議会の各会派へ要請を行い、自民党、共産党、維新との懇談を実現させました。代表の櫻庭葉子さんは「現場の状況は、アンケート調査以降一層厳しくなっている。ワクチンの優先接種やPCR検査にとどまらず、訪問介護介護事業への抜本的対策が必要」と話しています。

*「よりよい介護をつくる市民ネットワーク」 2016年に、「京都ヘルパー連絡会」「NPOきょうと介護保険にかかわる会」「NPO助け合いグループりぼん」などの5つの団体で結成。毎年1回、介護保険の問題点や課題を議論するシンポジウムを開催し、京都市へ提言書を提出しています。