北陸新幹線延伸(敦賀―新大阪間)計画をめぐり、京都市が先月、有識者会議の答申書を基に提出した西脇府知事宛ての意見で、答申書が求めた四つの項目のうち、工事に関わって、工法や工事関係車両が市民生活などに影響を及ぼさないこととした一項目を除外していたことが分かりました。

 意見提出は、着工に先立つ環境影響評価(アセスメント)手続きの一環です。

 今回、事業者である鉄道建設・運輸施設整備支援機構(横浜市)が5月に公表した、地下水や騒音、文化財などの13項目に関する「計画段階環境配慮書」について、関係市町が府に意見を提出。これらを踏まえて府は先月、機構に意見を提出していました。

 機構は、この他に、国土交通省の意見も踏まえて、アセスの手法を決めることになります。そのため、市民生活に密着した関係市町の意見提出は、重要な役割を担っていました。特に、京都市では、北陸新幹線が市内中心部を縦断し、大工事が行われるため、大きな意味を持っていました。

 市は意見提出に当たり、有識者でつくる「市環境影響評価審査会」(会長・笠原三紀夫京大名誉教授、他14人)に諮問。同審査会がまとめた答申書(7月4日)の三つの項目、(1)詳細なルートを検討する際、活断層の安全性への十分な配慮、病院、学校への考慮(2)地下水の水質及び水量への影響を回避・低減するための十分な調査(3)自然環境、文化財、経済活動に影響が及ばないよう、丁寧な調査と説明―はそのまま、市長意見として府に提出(同月10日)しました。

 ところが、答申書では、この3項目に加えて、「工事中の影響が大きい」と指摘し、「工法や工事関係車両の通行が市民生活や都市機能に影響のないよう検討すること」の項目の計四つを求めていたもの。市は、知事に意見を送る際の通知文に、「工法や工事関係車両の通行」による「市民生活や都市機能への影響を最小化するよう十分に検討すること」との文言を盛り込んだものの、意見からは除外していました。

 府も、京都市と同様に有識者による「環境評価専門委員会」に諮問を行い、答申を基に意見を提出。その際には、答申が求めた11項目をそのまま意見としてまとめています。

専門家指摘弱める 市議会文化環境委員会/共産党・冨樫議員が追及

 この問題は、日本共産党の冨樫豊市議が市議会・文化環境委員会(7月23日)で追及しました。工事に関わる問題は重大であり、専門家が答申で指摘したもので、「市長の意見は、それを弱める内容になっている。非常に問題」と市の対応を批判しました。これに対し、市は「意見の中からは除いているが、通知文には書いている」などと開き直りの答弁に終始しました。