ツクシ 春雨の翌日、京都地方にも春一番の暖かい風が吹き荒れ、土手のツクシもあわててニョキニョキと頭をもたげはじめました。伏見区を流れる新東高瀬川下流、陽光が照らす土手では、毎年、宇治川に合流する附近までの堤防斜面や犬走りにツクシが群生します。今年は厳冬が続き少し遅くなるとの予想もありましたが、高知県の桜開花の便りを待っていたかのように、ツクシも一気に顔を出しました。
 一昔には、子供たちや親子連れが「ツクシ誰の子、スギナの子」と歌いながら、新高瀬川の土手でツクシを摘んでいましたが、今は「赤羽根のつつみ生ふるもつくづくし のびにけらしも摘む人なし」と子規が詠んだ如く、少々寂しい光景です。
 ツクシはスギナの地下茎から出た胞子体です。スギナはトクサ科の多年草で学名=Equisetum arvense、トクサ科を含むシダ類は隠花植物で、花をつけず胞子や地下茎で繁殖します。3億年前の氷河期を乗り越え、かつては高さ30メートルの大森林を形成していたとも言われています。
 スギナの名前はその形が杉の葉に似ていることから「杉菜」、ツクシは筆に似ているから「土筆」(一説に地面から突き出ているからツクシとも)。スギナのナは「菜」であり、和名に菜がつく植物にはヨメナ、セイヨウカラシナ、ブタナ、ゴマナ、ツルナ、ソバナのほか多くみられ、古くは食用になった草には「ナ・菜」が付けられていたことが伺えます。
 消費税アップ目前の冷たい世間も、4月になったら世直し知事で春一番の暖かい風を京都の街に吹かせたいですね。
 「見送りの先に立ちけりつくづくし」(丈草)
 「さは摘みし土筆の袴とる夜かな」(召波)