オオイヌノフグリ 春の音が聞こえてきました。伏見区南部、久御山町と宇治市に囲まれた府下最大の巨椋干拓圃場の畦道にオオイヌノフグリやホトケノザの小さな花が咲き始めて春の到来を告げはじめました。
 赤紅色のホトケノザ(仏の座:学名Lamium amplexicaule)は幾重もの葉っぱが重なり、仏様がちょこんと乗っている形に見えることからホトケノザと言う名前のなりました。春の七草のホトケノザ(キク科コニタコビラ)とはまったく別種で、こちらはシソ科オドリコソウ属です。これから6月頃まで咲いていますが地味で見過ごされてしまいますが、少しは観てやってください。
 オオイヌノフグリ(学名=Veronica persica;ゴマノハグサ科クワガタソウ属)の原産はヨーロッパで、明治初期に渡来し全国に広がっている雑草です。干拓田の畦路の太陽がいっぱいあたる南斜面にホトケノザと並んで小さい花をつけています。
 古来から有る日本の「イヌノウグリ」は少し小ぶりですが、オオイヌノフグリのように葉っぱの縁の鈍い鋸歯はありません。オオイヌノフグリの花の色は真ん中が白で周りがルリ色でとても可愛いです。花輪触れるとぽろりと散ってしまってか弱いようですが、なかなかしぶとく茎は枝分かれして地を這って大きな株をつくりながら広がっていきます。この果実は犬のふぐり(陰嚢)に似ているところから付けられましたが、もっとかわいい名前がつけられたらイメージも変わっていたと思います。花言葉は信頼・神聖・清らかや忠実などで、とうていイヌフグリというイメージではありません。
 干拓地の田圃や畑では、農家の人達が春に備えての手入れに余念がありません。まだまだ寒い日がつづきますが、太陽の日差しをいっぱい浴びた雑草達は春を敏感に感じとって可憐な花を咲かせるでしょう。人間社会も厳しい生活の冬景色から消費税も軍隊もない平和でうららかな春を迎えられたらと思います。でもこちらは時間が経てば自然に訪れるのではなく、人々が力を合わせてつくっていかないと暖かい春はやって来ないようです。(仲野良典)
「午過(ひるす)ぎの 花閉じかかる 犬ふぐり」(松本たかし)