ハナショウブ 梅雨入りしてどんよりしていた京都も3日目には青空が広がり、左京区の京都府立植物園にもたくさんの入園者があり、あちらこちらに花咲く園庭を楽しんでいます。特にハナショウブ園には改良されたハナショウブ(沿海州、螢の宿、藤奴、早苗の舞や澄心など)を床に植生群生させ、見事な花を順番に咲かせています。
 ハナショウブはアヤメ科アヤメ属のハナショウブ(花菖蒲:Iris ensata var. spontanea)で葉っぱは長い剣状で互生2列に付けます。花は直立した花茎を出し先っぽに3枚の外花被で楕円形の赤紫、白などの花を開かせています。基部は黄色で、内花被片は小形です。多様に改良されて、花の色も紫、白、ピンク、青、黄色など、絞りや覆輪など組み合わせれば総数5000種類ぐらいあるといわれます。鑑賞は園全体を鑑賞するだけでなく、葉っぱや茎、花の1つをつぶさに観察すれば美しさと新たな発見とで楽しさが3倍になります。
 ハナショウブ園で鑑賞する人はカメラに収めたりして紫色や白にかがやく花菖蒲を愛でています。木津川市から訪れた夫婦連れは「こんなにたくさんのハナショウブ、なかなか見られませんね。とてもきれいで来てよかったです」と咲き誇るハナショウブの床を順番に観てまわっていました。
 5月の節句で飾られたり、菖蒲湯に使われる香りの良いショウブ(菖蒲・葦草・軒菖蒲)はサトイモ科のショウブ属で、ハナショウブとはまったく別物です。しかし一般にショウブと言えばハナショウブを指して使用されているようです。漢字の「菖蒲」はショウブとかアヤメと読みます。カキツバタ(杜若・燕子花)もアヤメ科アヤメ属でハナショウブとは同じ兄弟です。(仲野良典)
 「ほととぎすなくやさつきのあやめ草 あやめもしらぬ恋もするかな」(よみ人しらず)
 「噴井べのあやめのそばの竹棚に 洗面器白し妻が伏せたる」(北原白秋)