京丹後市への米軍レーダー専用基地計画問題で、基地の運用や米兵による事件・事故など、府民から多くの不安の声が出されています。米軍基地の問題点について、沖縄県の元宜野湾市長・伊波洋一さん(61)に話を聞きました。

オスプレイ、普天間爆音米軍を規制できない

 ―宜野湾市の米軍普天間基地はじめ、すべての米軍基地の撤去をめざして運動されています。米軍基地があることによって、住民にどのような不利益が起こるのですか?

伊波洋一・元宜野湾市長 伊波 日米安保のもと、日本政府は、住民の生活よりも米軍を最優先してきました。京都のレーダー基地は、沖縄と比べ規模が小さいから大丈夫という問題ではなく、危険な本質は全く同じです。
 沖縄では96年にSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意が結ばれ、普天間基地全面返還合意と米軍の騒音被害をなくすための騒音規制措置などの約束をしましたが、全く守られていません。また、昨年10月に配備されたオスプレイの飛行について、日米合同委員会では、垂直に離着陸する「ヘリモード」の使用は米軍基地内に限る、人口密集地の上空飛行は可能な限り避ける、編隊飛行は避けるなどのルールを合意しましたが、これも全く守られていません。
 防衛省に抗議しても「確認していない」と述べるだけ。アメリカ側は、「合意は破っていない」と主張します。なぜなら米軍が運用上必要と認めれば例外が認められるからです。日米安保のもとでは、住民に被害があっても米軍を規制できないのです。京都の米軍基地でも事前の約束事項が守られる保障はありません。

米兵事件・事故の不安「公務中」日本で裁けず

 ―米軍による事件・事故への不安が広がっています。

 伊波 公務中の米軍人・軍属の犯罪は日米地位協定により、第一次裁判権は米国にあります。日本で裁くことができないのです。09年~11年での公務中の米兵による死亡・傷害
事件事故は188件で、軍法会議にかけられた事案はゼロでした。
 先日の京都民報(5月5日付)でも米兵に暴行されたジェーンさんや、妻を殺害された山崎さんが登場されたそうですが、そのような残酷な被害を受けても、日本の警察・行政は米兵を罰そうとせず、被害者を救おうとしません。報道されている以上に、泣き寝入りしている被害者がたくさんいるのです。

地域経済振興する?基地依存で発展せず

 ―米軍基地を置けば、地元の経済振興につながるという声がありますが、どう考えますか?

 伊波 沖縄では、米軍基地移設のためのSACO交付金や再編交付金などで、不必要なハコモノが多く作られました。建設後に維持費がかかり、逆に財政を苦しめ住民負担のものも少なくありません。今は、米軍基地跡地による経済効果が大きく成長しており、基地を返還させて平和利用するのが最も経済効果がある、というのが主流な考えです。
 基地に依存して、利益を得る人もいますが、ごく一部の人だけで地域全体に波及しません。米国の他国攻撃のためのレーダー基地で、多くの危険性があります。振興策は、住民の命と吊り合うものではありません。
 米軍基地問題を自分の問題としてとらえてほしいと思っています。沖縄では住民は財産権や基本的人権が踏みにじられているのです。京都にも沖縄にも米軍基地は必要ありません。米国の軍隊は、日本から出て行き、米国に戻ってもらうのが当たり前ではないでしょうか。(「週刊しんぶん京都民報」2013年6月2日付掲載)