日米両政府が京丹後市の航空自衛隊経ヶ岬分屯基地に米軍専用レーダー(Xバンドレーダー)基地を設置しようとしています。何が問題か、たたかいの展望などについて、日本共産党の吉田早由美・京都府委員会米軍専用基地問題対策委員会責任者に聞きました。

北朝鮮問題は道理による外交交渉で解決

 ――北朝鮮のミサイル開発・核兵器問題があるから仕方がない、と言う意見があります。どう考えますか?

自衛隊経ヶ岬分屯基地を調査する井上議員と倉林候補自衛隊経ヶ岬分屯基地を調査する、井上議員(右)と倉林候補(4月1日)

 吉田 北朝鮮の核ミサイル問題で大事なことは、北朝鮮に危険なミサイルの開発をさせない、核兵器を開発させない、発射させないことです。北朝鮮の労働新聞は、経ヶ岬の配備計画が発表された直後、米国に対して「米国が核戦争の導火線に火をつければ、直ちに先制攻撃を行使する」と挑発をしてきました。軍事的対応を強めれば、強めるだけ、危険な事態がすすみます。
 国際社会は、軍事力行使一辺倒ではありません。アメリカは「北朝鮮が一歩踏みだすならば、対話の用意がある」といい、韓国も対話の門戸を開いています。日本政府は、北朝鮮との外交のパイプが一切無いまま、軍事的対応を強めていますが、北朝鮮問題を利用して、憲法9条を変えて、戦争ができる国にするなどというのは、最悪の対応ではないでしょうか。道理に立った外交交渉による解決に徹することこそ必要です。

米国が先制攻撃を可能にするためのもの

 ――設置目的は「日本の防衛のため」とされていますが、真の狙いは?なぜ京丹後市に設置しようとするのでしょうか。

 吉田 「Xバンドレーダー」は、米国の「ミサイル防衛計画」の最前線基地として、弾道ミサイルの飛行を早期に発見し、迎撃しようとするものです。防衛省は、ハワイ・グアムに向けての弾道ミサイルを追尾するとしていますが、日本を攻撃してくるミサイルを探知しようとするものではありません。米国が「防衛の盾」を持って、反撃の恐れなく、先制攻撃を可能とするためのものです。
 なおかつ、弾道ミサイルを撃ち落とすミサイル防衛は未完成な技術で、元米国のミサイル防衛担当者や日本の軍事ジャーナリストからも、撃ち落とす確率は5年続けて1億円の宝くじに当たるに等しい、との指摘もあります。
 自衛隊経ヶ岬分屯基地には、米軍共用の弾道ミサイル追尾機能を持ったレーダーが既に設置されています。
 なぜ、米軍専用基地なのか…それが意味するのは、「米軍ミサイル防衛」だからです。米軍専用基地ができれば、日本政府は、米軍に要請することしかできなくなるのです。京丹後市経ヶ岬への設置について、「最適な候補地」としながら、納得のいく説明をせず、本質を隠そうとしています。

不平等な日米安保条約を続けていいのか

 ――米軍基地をめぐるアメリカの横暴、安倍内閣の危険な動きと国民の矛盾、怒りが高まっていますね。

 吉田 今回の米軍基地建設は、憲法96条の改悪に続き、憲法9条改悪、国防軍の創設、集団的自衛権の行使など、日米軍事同盟強化の流れの中で出てきている問題です。4月28日の『主権回復の日』の式典で、「天皇陛下バンザイ」を三唱したと報道されていましたが、日本が再び、戦争への道を進もうとする動きに背筋が寒くなります。
 日米安保条約によって「全土基地方式」~米国が望めばどこにでも基地がおける~従属的な構造によって、現在132カ所の米軍基地が存在しています。沖縄の嘉手納町の82%が米軍基地です。地位協定によって住民の暮らし、安全よりも、米軍基地が優先される国は、日本だけです。こんな不平等な日米安保条約を続けていいのか、憲法9条を変えて海外で戦争をする日本でいいのか、怒りの声が大きく広がっています。

住民の不安や疑念にまともに答えられず

 ――住民の暮らしと安全への影響に対する不安、疑問に答えているのでしょうか。

 吉田 2月22日の日米首脳会談で安倍首相が約束し、地元京丹後市へ申し入れがあったのは、その4日後でした。突然の米軍基地建設計画に、とまどいが広がりました。
 日本でただ1つのXバンドレーダーが設置されている青森県・つがる市車力基地は広大な自衛隊基地・米軍基地の中にあり、経ヶ岬とは条件がまったく違います。
 米軍基地予定地は、人家からたった300メートルしか離れていません。それから2カ月半、住民説明会が開催されましたが、「レーダー照射で、健康への被害はないのか」「農業や漁業の影響は?」「米軍基地ができれば沖縄の様な事件、事故が起こるのでは?」「ドクターヘリの運航に影響はないのか」「北朝鮮の攻撃の対象になるのではないか」など、住民のみなさんからの不安や疑問が噴出しました。
 これに対して、「周波数など安全なものであり、健康への被害はない」「立ち入り禁止区域や半径6キロメートルの半円形型の飛行制限区域を設ける」「急患の輸送、海難救助等の事態が発生した場合の備えとして、調整要領を確立する」「騒音対策として、防音壁をつくる」と説明しながら、肝心な事については、「安全です。問題はありません」「軍事機密でお答えできません」「車力では何の問題も起こっていません」「米国側に要請します。聞いておきます」と、あいまいな答弁に終始しました。
 住民は、聞けば聞くほど不安と疑念を深めています。マスメディアも「現状では、安全安心に関する懸念の払拭ふっしょくには、なお遠い」(「京都」5月6日付)と報道しています。

反対運動で撤回可能「平和な日本」京都から

 ――反対運動が急速に強まっています。たたかいの展望と府民への呼びかけを聞かせてください。

 吉田 5月1日に京丹後市で、労組や団体、個人の参加で「米軍基地建設反対丹後連絡会」が結成されました。22日には京都市で、「米軍基地いらない京都府民の会」(略称)が結成されます。米軍専用レーダー基地設置の計画中止・撤回を求める一大署名運動も始まりました。地元地域でも、安心と安全が確保されない限り、了承できないの声が続出する中で、市長や知事も「住民の安心・安全が第一」と答えざるを得なくなっています。沖縄で普天間基地の辺野古移設を17年間止めてきたのも、沖縄全土で基地反対の運動が広がったのも、住民の反対運動が広がったからです。千葉県・柏市や埼玉県・所沢市でも住民運動の広がりで米の電波基地を撤去させています。

7月の参院選でも大争点に

 マスコミは、知事が「7月、8月に判断する」と報じています。直前に行われる参院選でも府民的な大争点となります。防衛省は、「押しつけではない」といいながら、現地に常駐し、地元対策を強めています。京都をミサイル防衛の最前線基地にしてはなりません。憲法9条を高くかかげ、平和な日本をつくろうの声を、京都から発信しようではありませんか。急いで「京都に米軍専用基地はいらない」の輪を大きく広げ、設置計画の撤回を実現させましょう。(「週刊しんぶん京都民報」2013年5月12日付掲載)