タンポポ 長い厳冬のトンネルをくぐり抜け、京の街にもようやく暖かい春を迎える三寒四温の季節になりました。そんな京都市南部を横切る宇治川の堤防にとても珍しいシロバナタンポポが僅かですが自生し、花を咲かせています(写真)。
 タンポポ(漢名=蒲公英/ほこうえい:キク科タンポポ属で多年草)は、北半球の寒冷地から温暖地まで幅広く400種ほど自生しています。日本には北海道の少し大きめの花を咲かせるエゾタンポポ、ユウバリタンポポなどや日本海側の高山に生えるミヤマタンポポ、北アルプスのシロウマタンポポから本州の一般的なカントウタンポポや小さめの花が咲くカンサイタンポポ、ヒロハタンポポなど約22種類が日当たりのよい場所に野生し多くは群生しています。
 しかし、古くから日本に自生しているこれらのタンポポたちは徐々に繁殖力旺盛で大型のセイヨウタンポポやアカミタンポポなど帰化したタンポポに進出されてその勢力圏をうばわれているようです。また在来種との雑種化も進んでいると報告されています。
 関東や関西ではタンポポと言えば黄色い花が一般的ですが、四国や九州地方ではタンポポは白が一般的とか言われ黄色は珍しいとか。白いタンポポはシロバナタンポポ(Taraxacum albidum)と言われ、堤防、野原に固まって咲いており、町中でも太陽がよく当たる公園や空き地にもポツンと咲いています。白だから咲いていても多くの人は目にとめず、見過ごしているようです。奈良県明日香村の蘇我馬子の墓「石舞台」付近や栃木県の足利市南部山片村一帯にシロバナタンポポが群生しているという報告があります。京都の桂川下流域にも群生しているとの情報が寄せられています。
 タンポポの名の謂われは古くから自生しているので色々な説があります。種子が球状の冠毛だから拓本や版画に使うタンポに似ているからとか、タナ(田菜)がタンと訛って、冠毛がほほけるからポポとなり、合わさってタンポポと、花茎を切って水につけると放射状に反り返ってまるで鼓状になって(鼓を打つとタンポンポンの音から)タンポポとか。若葉をお汁に入れたり、湯がいてひたし物やあえ物にするなど結構食材として重宝されていました。セイヨウタンポポもフランスなどで現在も野菜として多用されているとのこと。根っ子は地中深く牛蒡状で生薬の蒲公英で健胃・沁乳剤の効能がある薬草です。(仲野良典)
 「たんぽぽに日の静かなる堤かな」(午心)、「錆びし世に日だまり土手にフッと咲き シロバナタンポポ夢ふくらます」(良典)