京都地方労働組合総評議会常任幹事会は20日、野田政権の大飯原発再稼働の決定に抗議し撤回を求めるとともに、原発ゼロの政治への転換を呼びかける声明を発表しました。以下、声明の全文を紹介します。


原発に固執する野田政権から、原発ゼロをめざす政治への転換を呼びかけます。―大飯原発3号機・4号機の再稼働決定に抗議し撤回を求めます―

京都地方労働組合総評議会常任幹事会

 6月16日、野田政権は、大飯原発3号機・4号機の再稼働を決定しました。先立つ8日、野田首相は、「国民生活を守るため」として、福井県大飯原発3号機・4号機を「再稼動すべきというのが私の判断」と表明しました。
 野田首相は、「東電福島原発の事故の記憶が残る中で、多くの皆さんが原発の再起動に複雑な気持ちを持たれていることはよく、よく理解できます」と述べました。福島第一原発事故が収束せず、今なお、避難生活が16万人規模にのぼり、放射能被害が深刻さを増している実態を、過去のことのように描いたことは重大です。福島の総意は「複雑な気持ち」でなく、原発の廃炉です。国民の苦難を踏みにじる表明に、満身の怒りを表明し、抗議し、撤回を求めるものです。
 また、野田首相は、再起動の理由として、「福島を襲ったような地震・津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています」「原子力発電を今、止めてしまっては、あるいは止めたままであっては、日本の社会は立ち行きません」と述べ、「国の重要課題であるエネルギー安全保障という視点からも原発は重要な電源」としました。これらは、以下の点で重大です。
 (1)福島第一原発事故の原因や実態が依然不明で、事実、関電大飯原発は安全対策を完了しておらず、新たな安全神話をふりまいたこと、(2)原発の必要性について、国民の命と暮らしや営業を対立させ、「突発的停電」などと国民を脅し、原発に依存しない電源を求める声を否定したこと、(3)「世論を二分している」などと、財界と原発利益共同体による原発再稼働要求を片方の世論のように描き、国民の「安全が第一」「そのもとでの雇用や経済の確保」という圧倒的で真摯な世論を踏みにじって原子力利益共同体の代弁者になったことです。
 これらによって、停止している原発の再稼動と推進に道を開いたことは、許せません。さらに、老朽化した原発廃止年限の見直しや、海外への原発の輸出などは、政府が原子炉メーカー等と一体となって、原発の永久化と拡散をねらうもので、断じて認められません。
 関西広域連合と京都府知事が、暫定的などと結局稼動を認め、これら政府の原発再稼働に道をつけたことは、住民への背信的行為です。
 住民の命と暮らしを守るべき地方自治体が、国民の安全を省みない政府に反対し、再稼働反対と原発ゼロをめざすことを明確にし、その下での自然・再生可能エネルギーへの転換、原発に頼らない雇用と地域経済、自治体財政の確立の道にすすむことを、強く求めるものです。
 昨年3月11日以来、日本は、新しい道を模索することを求められました。それは、災害に強く、命と暮らしをいつでも、どこに住んでも守られる、住民・地域を主役にした政治や経済の再生の道であり、同時に、原子力発電という危険で制御不能なエネルギーからの政治的、経済的、技術的脱却の道でした。
 私たちは、この1年、その新しい道を切り拓くために、被災地の皆さんと力を合わせてきました。そしていま、世論の動向も、脱原発を選択しています。
 野田政権が、国民の新しい道の探求を否定し、後戻りを表明したことは、福島県民をはじめとする努力と国民世論への対決表明であり、「国民生活を守るために」も、この政治を1日たりとも続けさせるわけにはいきません。
 歴史を後戻りさせようとする野田政権による政治をやめさせ、脱原発の新しい政治を打ち立てていくことを、心から呼びかけるものです。