「原発ゼロ社会の安全文化」と題したシンポジウム(日本科学者会議京都支部主催)が9月24日、伏見区の龍谷大学で開催され、56人が参加しました。
 富田道男同支部代表幹事のあいさつに続いて、歌川学氏(産業技術総合研究所)が「省エネルギー社会」と題して、当面のピーク電力の課題と、中期的な温暖化対策をふまえた省エネを取りあげました。冨田氏は、今夏は原発の約8割が停止したが、節電で最大電力が昨年比で1割強減少し、需給に問題なく乗り切ったとのべ、「来夏には全原発が止まる可能性があるが、今年程度の節電で需給は可能である。2010年までの温室効果ガス排出25%削減も省エネ技術の計画的導入や節電で十分可能」と述べました。
 和田武氏(日本環境学会)が「再生可能エネルギー社会を目指して」と題して講演。原子力利用の危険性から話を進めた和田氏は、ドイツやデンマークの事例から再生可能エネルギー利用による社会の発展について、豊富な経験と実践に基づいて述べました。再生可能エネルギーの導入で、関連産業の発展による雇用の創出、エネルギー自給率の増大、農山村地域の自律的発展などが期待されるとのべ、「そのためには市民・地域参加の取り組みが必要である」と指摘しました。
 最後に、宗川吉汪氏(生命生物人間研究事務所)が「原発問題と科学者の社会的責任」について、「原発反対の主張は反技術」「科学は政策(価値)に対して中立」という一部科学者の意見に対する批判を展開しました。そもそも原発技術は軍事技術的性格をもち、製造と使用にしか興味がなく、廃炉や死の灰の処理などは後回しになると指摘。さらに、科学は没価値であるという意見に対しては、核兵器反対を表明した物理学者たちの事例を引いて反論しました。
 討論を通じて、原発に依存しない社会がすぐ近くにあること、原発ゼロ社会の安全文化の建設には技術開発、制度の整備、市民の参加、科学者の責任などが重要であること―などの認識を深めました。(S)