“大地震と若狭湾原発群事故の同時進行でも複合災害のリスクはかなり少ない”、“琵琶湖の放射性物質は大量の湖水で薄まる”―こんな見解を、京都市防災対策総点検委員会が「中間報告」でまとめていることが分かり、市民、専門家から「原発事故への認識を疑う」と批判の声があがっています。

脱原発宣言が当然

立命館大学教授(環境経済学) 大島堅一さん

 「中間報告」は、一言で言えば、防災対策の体をなしていないと思います。防災対策は本来、最悪の事態を想定して、必要な対策を提起すべきものです。ところが、「中間報告」では、京都市域の大震災で、若狭地域の原発が事故を起こすリスクは少ないとか、琵琶湖の放射能汚染も「水量が多いため、水中で希釈される」などと、何の根拠も示さず書かれていて、あ然としました。
 国内で、原発が集中して立地している地域は3つです。福島第1原発(6基)、新潟・柏崎(7基)、福井(14基)です。その中で、60キロ圏内という近距離に100万都市があるのは京都市だけです。京都市は原発最前線の大都市です。また、福井で原発事故がおこれば、主要産業である観光産業は壊滅的打撃を受けるでしょう。京都市は、全国に先駆けて脱原発を宣言するのが当然だと思います。
 仮に、京都市が「中間報告」で書いているように、原発の安全性を前提とするなら、防災計画には、京都市は150万市民の避難計画を盛り込むべきです。避難計画ができるまでは、原発を稼働させるなと言うのが筋です。原発再稼働中止も言わないし、避難計画の検討さえもしない。京都市は今回、どういう形で専門家に諮問をしたのか、見識を疑います。

「中間報告」
 同総点検委員会は、東日本大震災・福島第1原発事故を受けて市防災計画を見直すため、行政関係者や学識経験者28人が参加して6月22日と8月29日の2回開催。第2回委員会で「中間報告」をまとめ、市に提出しました。
 中間報告は、「原子力発電所事故等に関する対応」について、「今後、京都市域で大規模地震が発生し、同時に若狭地域の原子力発電所で事故が起こって、福島第一原子力発電所で起こったような複合災害が起こるリスクはかなり少ないというのが、原子力の専門家の見方である」「琵琶湖の水の放射性物質による汚染に関しては、仮に琵琶湖方面へ放射性物質が飛散したとしても、琵琶湖の水量が非常に多いため、水中で希釈される」などとしています。(詳しくは「週刊しんぶん京都民報」2011年9月11日付)