府政動かし雇用守る
工場閉鎖撤回を要求/青年雇用アンケートを実施

 「工場閉鎖は理解できる」「正規雇用義務付けすると企業は来ない」│これまで非正規雇用容認の姿勢を取ってきた京都府に対し、繰り返し「使い捨て労働は許さない」と政策転換を求めてきた日本共産党。労働者と力を合わせて工場閉鎖撤回や雇用実態調査に取り組み、雇用を守る運動の先頭に立ってきました。その活動は京都府政を大きく動かしています。

知事を本社にまで行かせた

 「明日、弊社にお見えになる時間をなんとか変更していただけないでしょうか」。09年12月16日午後2時。日本共産党府議団(新井進団長、11人)に、住宅建材の大手メーカー「トステム」東京本社から、あわてた様子で電話が入りました。
 同社は2カ月前、突然、綾部工場を閉鎖し、労働者400人を首切りすると発表しました。電話は、同党府議団と綾部市議団が翌17日午前11時に計画撤回を求める同社への申し入れが決まった直後でした。
 トステム側は電話口で「急で申し訳ない」と繰り返すばかり。翌日、変更理由が判明します。山田知事が両議員団の申し入れ前に、自ら同社を訪れ申し入れを行うという“演出”をするためでした。
 知事は工場閉鎖計画が発表された直後、「企業として(撤退は)理解できる」(09年10月の記者会見)と、容認する姿勢を見せました。
 これに対して、同党府議団は計画発表後直ぐに綾部工場を訪問し、計画の再考や雇用確保を要請しました。計画撤回を求める労働者らの運動と連携し、同工場労働者へのアンケート調査を実施。地域経済に深刻な打撃を与える事実を示し、「地域経済と雇用を守る立場に府が立つべき」と繰り返し議会で要求しました。
 他党では「創生」の議員が1回だけ本会議で質問。あとはだんまりを決めこむ中、同党の論戦は鮮やかな対比を見せました。
 こうした中、知事は09年11月議会で、「工場閉鎖の再考を会社に要請するとともに、雇用確保に全力をあげたい」と表明。知事自ら一民間企業に出向き、計画撤回を要請するところまで、府政を動かしました。
 同綾部工場で結成された労働組合の親組合JMIU京滋地本の役員、細見節雄さんは、「知事を本社まで行かせたのは見事ですね。工場は閉鎖されましたが、トステムに、少なくとも正社員について『最後まで再就職支援を行う』と約束させたのは成果です」と話します。

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正規当たり前に転換させる

 06年2月議会。民主党議員が「正規雇用の要求は時代遅れ」と声高に発言。知事も「府の誘致企業に正規雇用を義務付ければ企業は来なくなる」とこれに同調しました。
 府は、国の「正規から非正規へ」という労働力流動化政策の下で、「働き方を選べる社会」を中期ビジョンにかかげていました。
 「働き方を選べるというのは、非正規雇用も当たり前、正社員になれないのは労働者の自己責任だ」というものでした。
 この方針のもと、100人の「派遣切り」(08年12月)をした自動車部品製造会社「ジヤトコ」に対して、府の指導は終始および腰でした。他党はこの件で一切質問をしない中、同党府議団は、3億円を超える府の雇用補助金を同社が受けていることを指摘し、繰り返し指導を府に要求して
きました。同社京都工場で派遣切りにあった中山真一さん(40)=仮名=は、議会を傍聴し、こう語ります。
 「首切りされた私たちの痛みを議会でぶつける共産党の姿に、どれだけ励まされたかわかりません。汚いヤジを飛ばした他党を絶対許せません」
 非正規雇用、派遣切りを容認する行政を変える転機となったのが、同党府議団と京都市議団(
19人、山中渡団長)の「青年雇用実態調査」(06~08年)。
 府議団は、非正規雇用は「格差と貧困」を生み出すとの立場から、その解決を求めて府内の派遣・非正規労働者の実態調査を繰り返し求めました。しかし、府は拒否。

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青年千人の声集め追及する

 「行政が動かないのなら」と両議員団は、15万枚のアンケート用紙を配布し、青年1000人から派遣や非正規の実情を集め、連続して議会で追及しました。
 その結果、知事は、「できる限り正規雇用にするため取り組んでいく」(08年2月議会)と従来の答弁を転換させました。派遣労働者の実態調査(06年9月)や「企業誘致条例」改正(07年2月議会)で正規雇用の位置づけを強化、「非正規労働ホットライン」(相談窓口)を開設させるなど、雇用政策を大きく変えさせてきました。
 民青同盟京都府委員会の小林聡さん(26)は、こう話します。
 「青年雇用の実情をつかみ毎年、行政と懇談ができるようになりました。行政から門前払いされていたのと大違い。政治は動かせるんですね。共産党と力を合わせて、さらに雇用対策の前進を勝ち取りたいです」(「週刊しんぶん京都民報」2010年10月17日付)