きゅうり封じ 京都の寺社では昔から、カボチャ炊、ダイコ炊や七草粥などを振る舞って庶民の無病息を願い、飢餓から庶民を守った行事がたくさんあります。その一つが「きゅうり封じ」。左京区の蓮花寺や北区の神光院などで行われています。
 21日は北区の神光院のきゅうり封じで、朝から大勢の参拝者が訪れています。真っ直ぐなキュウリをタテ3センチほど切り、無病息災などの願いが書かれた小さな吉祥文を畳んで入れ、参拝者の名前を書いた白紙で巻きます。これを本堂に供え、住職の読経で祈祷されたものが授与されます。そして各自持ち帰り、体の痛いところなどをこすり、キュウリに痛みを移して、地中に埋めて健康になるという言い伝えです。
 猛暑まっただ中での参拝ですが、涼しい本堂で読経と説教を聞けば、暑さも吹っ飛び元気になることでしょう。庶民の知恵と思えばまた楽しい伝統です。
 9本も授与してもらった宇治市からきた女性は「親戚やらご近所の方にお裾分けするんですよ。暑いし大変やけれど楽しいですよ」と言い、2人連れの女性は「近くの上賀茂神社当たりに住んでいます。地元で近いし、毎年来ています。気休めかもしれんけれど、おかげさんで、病気一つしません」とにこにこ顔でした。なお、マンション住まいなど自宅で埋められない人は、本堂横のきゅうり塚に奉納します。
 神光院は1217年に上賀茂神社の神主が創建したと伝え、三弘法(東寺・仁和寺・神光院)の一寺院。仏眼曼陀羅図(重文)や茶室など貴重な文化財があり閑寂なこころ癒される境内です。(仲野良典)