沖縄連帯鼎談

 沖縄の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)問題は、日米両国政府の「日米合意」をテコに、鳩山政権が沖縄県民に基地を押し付けようとしています。「本土、京都と沖縄の連帯を強め、『基地のない沖縄』のために一緒にたたかおう」-日本共産党の成宮まり子参院京都選挙区候補は17日、宜野湾市役所内で、同基地周辺に住む「反戦地主」の知念忠ニさん(75)、元普天間高校教諭の西里ひろ子さん(65)と、同基地の無条件撤去実現をめざすたたかいなどについて語り合いました。

頭上を米軍ヘリ、大騒音

 成宮 ここ、宜野湾市役所の屋上から見ると、米軍基地がすごく広いことがよく分かります。町のほどんどが基地のようですね。

 知念 市の面積の25%が基地なんです。これだけ住宅や公共施設に近くて、危険な基地は他にありません。

 西里 市が米軍基地に分断されドーナッツ型の町になっていますから、町の反対側から図書館や病院などの施設へ行くだけでも大変なんです。通勤時間帯はすぐに大渋滞ですよ。

 成宮 基地にフェンスを隔ててすぐ隣に住宅や学校があって…。近くにある普天間第二小学校は基地の滑走路の真横で、米軍基準のクリアゾーン(土地利用禁止区域)内にあるんですよね。

(3人の頭上をバリバリと大騒音を放ちながら米軍ヘリコプターが通過)

 成宮 あんなに近くを通過するんですか!すごい音ですね。こんなところで生活するのは大変だと思います。窓ガラスが厚さ9ミリもあるって本当ですか?

校舎屋上より低く通過する

 西里 そうです。防音のために分厚い窓ガラスです。今のヘリだと少し距離があって、まだましな方ですよ。私は普天間高校の教員をしていましたが、騒音がひどくて授業が中断するなんて日常のことです。ある教師が調べたら年間50時間分も中断するとのデータになったそうです。米軍の低空飛行訓練のため、学校の校舎の屋上よりも低くヘリが通過することもあるんですよ。

 成宮 そんなに低く飛ぶんですか。04年には沖縄国際大学へのヘリ墜落事故があるなど、事故が起こる危険性も抱えているんですね。

 知念 40年以上宜野湾市に住んでいますが、米軍基地の騒音の中で暮らし、今では日常的にひどく耳鳴りがするんです。子どもたちにとってもいい環境ではありません。こんな騒音は許せないと爆音訴訟の原告としてたたかっています。

 成宮 すぐにもこの基地を撤去させたいですね。95年に沖縄で米兵による少女暴行事件が起こり、沖縄、日本中が怒りました。私はその年、事件直後に沖縄で開かれた日本平和大会に参加し、米軍基地被害のひどさを直接聞き、実感しました。

 知念 その平和大会の青年集会で、私は米軍用地への土地借用契約を拒否する「反戦地主」として、発言したんですよ。

 成宮 そうなんですか!覚えていますが、発言されたのは知念さんだったんですね。あの時、「基地のない沖縄と日本をつくりたい」と心に刻み、それが私にとって政治への道を歩むきっかけとなりました。

 知念 そうですか。あの時の若者が日本共産党の国会議員をめざすまでに成長しているとは…。うれしいですね。私たちもやりがいがあります。

※爆音訴訟 普天間基地の周辺住民が国に対し、米軍機の夜間・早朝の飛行差し止めや損害賠償などを求めた裁判。08年6月に那覇地裁沖縄支部で住民側の主張を一部認める判決が出され、現在、福岡高裁で控訴審が行われています。09年9月には同市の伊波洋一市長が原告側の証人として法廷に立ち、同基地の騒音被害について告発しました。

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実態を聞いて大ショックに

 西里 95年当時、県民大会で「軍隊のない、悲劇のない、平和な島を返してください」と発言した中村清子さんは普天間高校の生徒です。ものすごい反響が学校にあり、基地をなくしたいという高校生や若い人の行動が全国に広がりました。

 成宮 すごく印象に残っています。私はあの事件より前の93年頃に沖縄を旅していたのですが、その時にも恩納村で民宿と漁師をしているお年寄りから米軍基地についてお聞きしたんです。米軍基地やリゾートホテルのせいで海が汚れ、年々魚がとれなくなったことを嘆いておられました。また55年に6歳の少女が米兵にレイプされて惨殺された「由美子ちゃん事件」など、米軍の犯罪事件についてもお聞きして、大変ショックを受けたんです。

 西里 米兵による事件は本当はもっとあるんですよ。事件や事故があっても、特に性犯罪の場合は被害者が声を上げられないことが本当にたくさんあります。ある女性が米兵にハンマーで何度も顔面を殴られ、殺されるというような事件もありました。母親が見ても本人かどうかわからないほどひどい姿になっていたんです。成人女性が米兵の被害にあい、報道されないことは相当数あります。

 知念 普天間基地の一部が子どもの通学路に開放されているんですが、そこで女子中学生が米兵に暴行されそうになったところをフェンス横に住む主婦が見つけ未遂になった事件もあります。沖縄県民の受けた屈辱は一部の人間だけじゃない。「抑止力だから我慢しろ」は許せません。県民全体が怒りを持っています。

故郷伊江島で土地奪われた

 成宮 本当にひどいですね。そもそも沖縄では太平洋戦争末期の45年、一般人を巻き込んだ地上戦が行われ、十数万人もの人が亡くなりました。戦争の最中に住民は米軍に土地を奪われたんですね。ここ普天間基地もそのひとつでしょう。

 知念 私も沖縄戦で父と兄を失い、母子家庭で苦労しながら青年時代を過ごしました。農業が中心だった沖縄で、土地を奪われるというのは、命を奪われるのと同じことなんです。

 成宮 だれも納得して米軍に土地を渡した訳じゃない。米軍は戦時中だけじゃなくて、戦後も住民から無理やり土地を奪い取っていったんですね。

 知念 ええ。私は沖縄本島の西にある伊江島の出身ですが、55年に私の実家の土地はじめ、多くの住民が米軍に土地を奪われました。私の姉は、嫁ぎ先で家財道具を残したまま家を焼かれ、土地を奪われました。私のいとこは、はしかにかかった子どもがいるにもかかわらず家をブルドーザーで破壊され、強制接収されました。病気の子どもは、トラックの上に乗せられ、見せしめのように町中を引き回されました。米軍は「土地を奪わないでくれ」と懇願する住民を不当逮捕することもありました。

 成宮 許せませんね。普天間基地のある宜野湾市でも、戦後に土地が奪われたのですね。

 知念 宜野湾市の伊佐浜というところでも55年のことです。朝4時頃、闇夜の中からブルドーザーが現れ、米兵が銃剣を突きつけて土地を奪っていったのです。伊佐浜は周りは基地だらけです。近くに移住することもできず、八重山や南米などへ仕方なく移住し、貧困に苦しまれた方がたくさんいます。

 成宮 その奪われた土地が今現在も基地として使われているんですね。絶対に返還させないといけない。

 知念 宜野湾は戦前はきれいなことで有名な田んぼがあったんです。それが戦中と戦後に米軍に不当に奪われました。こうした宜野湾は、アメリカに苦しめられている、沖縄や日本の縮図だと思います。

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青年と交流し決意に感激

 成宮 16日に行われた、普天間基地撤去を求める基地包囲行動に参加しました。次から次へと市民が輪の中に入ってきて1万7000人にもなり、手をつないでいく姿に感動しました。

 西里 私はものすごい大雨だったから、包囲できないんじゃないかとすごく不安で…。はじめは横断幕でも伸ばそうかと思っていたんですが、どんどん市民が参加してきて、最後は人が多くて立つのが窮屈になるほどでした。

 知念 小学生や就学前の小さな子どもらまで参加したのは印象的でした。この子たちが大きくなったら、本当に平和な沖縄がつくることができると希望が持てました。

 成宮 若い人の参加は心強く思いました。包囲行動後に、宜野湾市の20代の青年3人と交流したんです。「僕らは生まれた時から基地があるのが当たり前だったけど、今、すごく考え始めている」「米軍基地のない平和な沖縄を僕らの世代でつくりたい」という決意を聞き、未来はここにある!と感じました。それなのに、鳩山首相は普天間基地問題について「沖縄県への負担をお願いする」と表明し、名護市辺野古への移設案を進めようとしています。許せません。

米にモノ言う共産党大きく

 西里 沖縄県民は怒りでいっぱいです。4日に鳩山首相が宜野湾市の住民懇談会に来ましたが、住民から「恥を知れ」「沖縄に押し付けるな」と怒号が上がりました。その時、住民代表の一人として訴えたのは知念さんなんです。

 知念 私は原告となっている爆音訴訟の問題、沖縄国際大学へのヘリ墜落事故について告発しながら、市民が恐怖に怯えていることを訴えました。みんなが望んでいるのは「移設」ではなく、「無条件撤去だ」と強く要求しました。

 西里 知念さんが「無条件撤去を」と訴えた時にひときわ大きな拍手が起こったんです。みんなから「心がすーっとした」と評判でしたよ。やっぱり世論は無条件撤去を求める方向で進んでいると確信しています。

 成宮 民主党政権に裏切られ、沖縄の人が怒るのは当然です。日本共産党の志位和夫委員長は今月アメリカへ行き、米国政府に沖縄県民の思いを伝え、普天間基地「移設」計画は完全に破たんし、「閉鎖・無条件撤去するしか解決の道はない」と訴えてきました。アメリカにきっぱりとモノが言える日本共産党が大きくならなければならないと思っています。