農民組合京都府連合会(佐々木幸夫会長)は、このほど衆院京都4区の各候補者に対し、農業再建問題について見解を求め、回答を得ました。各候補の中で日本共産党の吉田幸一候補だけがアメリカ言いなりの農業政策から解決の道筋を示しました。
 農民連は、7月に京都4区の各候補者に、日本の食料自給率低下への解決策やMA米輸入問題、米価の値下がり問題など6項目にわたり質問状を送りました。
 回答を得たのは、日本共産党の吉田幸一候補、自民党の中川泰宏候補、民主党の北神圭朗候補の3人。中川候補や北神候補が、MA米輸入に反対せず、従来のアメリカ言いなりの農業政策から脱却できない中、吉田候補だけがアメリカによる農産物輸入自由化反対など農業再生に向けたプランを示しました。
 農民連の質問項目と各候補の回答は以下の通り。
●農民連の質問項目
①現在世界で、10億人が飢餓状態を承知しているか、感想と対策は?
②日本は自給率40%で60%の食物を輸入に依存している、解決策は?
③農家には4割の減反を押し付け、MA米を年間77万トンも輸入に賛否と理由は。賛成か反対か
④政府の採算ペースで米60キロ当り、9年産米は1万円を切ることは必至だが、対策を。
⑤農民連は、米価下落をくい止めるため、政府が自ら決めた「備蓄米」の常時100万トン維持のため12万トン~20万トンを早急に買い上げ下げとまりを要求している。下落対策は?
⑥最近特にひどくなった鳥獣害対策について解決策を。
●吉田候補
 この間の農民連の皆様の懇談とお仕事をつうじて、自民・公明政府の「亡国の農政」の実態を見せ付けられ、たたかいの必要を痛感しました。はじめに、この選挙戦の重点政策として取り組んでいくことを決意しています。
【1】世界的飢餓状態については、異常事態の進行と認識しています。世界的な天候不順、途上国の需要増、アメリカなどによるバイオ燃料生産の急拡大、投機資金による穀物価格の吊り上げなどがその原因で、各国の「食料主権」を保障する貿易ルールの確立、WTO農業協定の根本的見直しを求め、日米自由貿易協定の締結にきっぱり反対します。
【2】自公政権は、価格保障制度を廃止、規模拡大を条件に農業破壊を進めました。それは地球環境の破壊にも連動しています。わたしはそれとたたかい、食料の安定的確保のため、当面食糧自給率を50%まで回復する事をめざします。そのために、①価格保障、所得補償の実施②担い手の育成、就農援助③「食料主権」を保障する貿易ルールに④都市農業、中山間地農業への援助⑤「食の安全」と地域農業の再生、の施策の実現をめざします。
【3】、減反、MA米は農政破壊の最たるもので、反対です。背景にアメリカによる農産物輸入自由化、大企業・財界による補助金の削減のねらいがあります。「おいしいお米を皆さんの田んぼでつくる。」このあたりまえのことを実現するため全力をあげます。
【4】過去3年間の平均生産費を基準とし、その年の米価が基準額を下回った場合、差額を「不足払い」する価格保障制度を創設して、少なくとも一俵1万7000円以上を保障します。加えて水田の持つ環境保全の役割を評価した直接支払い(所得保障)を拡大し、併せて当面、一俵あたり1万8000円の米生産による収入を確保します。
【5】7月府議会で日本共産党は貴組合の要求を意見書としてまとめ、在庫100万トンを維持するため、①目減りしている20万トンの買い入れ②米価の下支えシステムの確立を直ちに行うことを求めました。皆さんとともに運動を進め、国政の場で実行するよう求めます。
【6】鳥獣被害は、シカとイノシシを中心に深刻な状況で中山間地の農業の衰退に拍車をかけています。日本共産党府議団は①「指定鳥獣管理計画」のみなおし②専任捕獲班をつくり、処理費用への補助の実施③研究センターをつくり、鳥獣被害対策の抜本的強化を求めました。新たに国政での対策の強化、拡大をもとめていきます。
●北神候補
①食糧価格の高騰により、世界の飢餓状況が一層に悪化しています。ここ2年間で新たに1億1500万人もが飢餓に陥りました。現在、世界の飢餓人口は10億人近くにまで上っています。さらに100年に一度と言われる世界同時不況が増加に拍車をかけるのではないかと考えられます。
 その解決の一つとして、我が国が持つ様々な農業技術、環境技術を発展途上国に対して積極的に供与していくこと、それに加え民生分野での支援を行うことにより、まず生活水準を向上させていくことが重要です。例えば、我が国が現在給油活動等を行っているアフガニスタン、ソマリアなどの国々に対しても、こういった支援を行うことが地域の安定、紛争を解決する大きな手段にもなると考えます。
②天候異変による不作、「発展途上国の経済発展による食糧需要の増大、資源ナショナリズムの台頭などにより、我が国が安定した食料自給を維持することは喫緊の課題です。他の先進国はほぼ完全自給を確保し、国民への食糧供給に責任をもっています。また、地球温暖化対策からも農林業のもつ多面的機能、その重要性は増していくばかりです。
地域経済の基幹産業として、また上記のような視点からも、農林業政策の根本的な転換を行うべく、「戸別所得補償制度」を創設します。これまで政府が行ってきた直接支払制度は一部の大規模農家などに限定した政策であり、食料自給率を取って見ても、これまでの自民党の農業政策は失敗であると言わざるを得ません。国民に必要な食糧を生産し、農村環境を維持できる農業経営が成り立つよう本制度の実現に取り組みます。
③WTOにおける貿易自由化協議、各国とのFTA、EPA締結の促進は我が国が通商分野で国際的に主導権を発揮するためにも積極的な姿勢で臨んでいかなければなりません。他方、食の安全・安定供給、自給率の向上、農家が農業を持続できるような条件整備も重要です。私たちはこの2つの課題を同時に解決していくためにも、「戸別所得補償制度」を創設します。本制度の創設や貿易自由化の促進により、当然ながら減反政策も見直さざるを得ないと考えますが、減少している農地面積の維持、食料の完全自給への取組み、食の安全・安心の確保、農業の持つ多面的機能の維持、国土の均衡ある発展を図るため地方経済の活性化、農家が農業を持続できるような条件の整備などの視点から、現場の皆様からのご意見を伺いながら見直していきます。
④②でもお答えした「戸別所得補償制度」は、経営規模、年齢にかかわりなく、意欲を持って取り組む農業者に対し、その生産費と販売価格の差を基本とした補てんを行い、その所得を補償するものです。本制度の創設がお尋ねの課題への対策の柱になろうと思います。
⑤私たちは、米の備蓄300万トン体制の確立を主張しています。これによって、米価の安定、食料の安全保障、諸外国に対する食糧人道支援の実施、バイオマス利用推進への道を確立します。
⑥私の任期中に鳥獣被害防止特別措置法が成立させました。本来、農作物被害は、この特別措置法を待たずして、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(鳥獣法)の抜本改正によって対応することが筋であると考え、私たちは、この数年の鳥獣法改正の度に、被害防止を最重要課題のひとつとして(1)生息環境の再生を含む鳥獣の総合的な管理、(2)人材の育成・配置、(3)実態把握の推進などを訴えてきました。近年の農作物被害は、山林や里山が荒廃して野生動物が人里に進出していることが背景にあり、実効性ある被害防止のためには、捕獲・駆除だけではなく、「生息地の維持・再生」、「被害防止」、「適切な個体数管理(捕獲・駆除)」の3つを一体として実施することが不可欠だからです。
ここ京都4区でも地元の皆様から鳥獣被害については数多くのご意見をいただいております。今後は、この法律の運用状況を厳しく監視しでいくとともに、真に実効性ある被害防止と生態系保全を進めるため、党の政策として鳥獣保護法の改正案の提出・成立をめざします。
●中川候補
①飢餓人口が増えていることは承知している。これはグローバル資本主義のもと、行き過ぎた市場原理主義と規制緩和がもたらしたものであることは間違いない。これを解消していくには、行き過ぎた市場原理主義を見直すとともに、食料安全保障を確立して、自国の食料を自国で賄えるような仕組みを構築していかなければならない。そのためには、WTO農業交渉などで、世界各国における多様な農業の共存を可能とする新たな農産物貿易ルールを確立するとともに、国際的な備蓄や途上国における食料援助の仕組みを確立していく必要がある。
②行き過ぎた市場原理主義の中で、我が国の食料自給率が40%まで低下したのは間違いない。先進国の中では最低であり、食料安全保障の観点からも、全国民的課題としてこれを引き上げていく必要がある。特に家畜のエサを自給することによって自給率は高まるので、飼料用米の生産拡大を支援する必要がある。
③「減反を押し付けている」とは考えていない。食の多様化で米消費が減少する中で、苦渋の選択として関係者が懸命に生産調整に取り組んでいるのである。
MA米も、国際社会の中で日本の国益のために苦渋の選択として受け入れたものである。基本的には主食用の需給に影響を与えないような運用がなされており、まずはそこをしっかりと監視していく必要があると考える。ただ、MA米の在庫負担の増加や事故米の発生など、大きな問題点が生じているのも事実であるので、WTO農業交渉の場などを通して、MA米の在り方や今後の運用等につき議論していく必要があると考える。
④今年産米の相場感が明らかになっていないので、仮定に基づいた対策は考えようがない。現在は米の需給と価格安定のために、関係者が生産調整や今年措置された「水田フル活用対策」などに懸命に取り組んでおり、まずはこれをしっかり実行していくことが必要であると考える。その上で大幅な米価下落が生じた場合は、当然農家の経営を守るための緊急対策が必要である。
⑤④でも述べたように、今年産米の相場感が明らかになっていない中での買い上げ要求には慎重にならざるを得ないが、相場をにらんだ上での早めの対応が必要である。米価が大きく下落した場合、100万トンの備蓄に隙間があれば、その買い上げも含めた対策は必要であると考える。
⑥鳥獣被害が拡大しているのは間違いなく、私も一昨年「鳥獣被害防止特措法」の成立に尽力した。これをしっかり活用していくことが必要であると考える。また被害の深刻化は高齢化や担い手不足が深くかかわっているので、中山間地域等直接支払制度などの継続も必要である。更に今後被害がさらに拡大することになれば、法律に明記されているとおり個体駆除のために自衛隊の出動を要請していきたいと考えている。