戦争を経験した財界人という立場から憲法9条を守ろうと訴え続けている、経済同友会終身幹事の品川正治さん(財団法人国際開発センター会長)が10日、京都市中京区のラボール京都で開かれた「京都民医連・民医労・共同組織・共済会2009年新春のつどい」で講演し、参加した府内院所の職員ら330人に向けて、「戦争を起こすのも人間なら止めるのも人間。改憲ノーの声を上げ、世界史を変える一役を担ってほしい」と語りました。
 品川さんは、1944年に中国に出征し、最前線で激しい戦闘を繰り返しました。目の前で攻撃を受けた友人を助けられなかったことが心の傷となり、最近まで自身の戦争体験を語ることができなかったと明かしました。
 憲法との出会いでは、終戦後中国からの復員船の中で新聞に全文掲載された日本国憲法草案を同僚兵士の前で読み上げ、憲法9条のところで隊長含め全員が涙を流したことを紹介。「戦争放棄をうたい、軍隊を持たないと書いてくれたことに私も声が出なくなりました」と当時の気持ちを語りました。
 旧制三高時代にカントを学び、〝国家が起こす戦争に、国民の1人としてどう生き、死ぬのか〟を命題としていた哲学青年にとって、憲法は人間の目で戦争を見て、人間として戦争は許されないとうたっていることに衝撃を受けたといい、「戦争は天災ではない。起こすのも人間なら、それを許さず止めるのも人間。『お前はどちらなんだ』というのが戦後の命題となった」と振り返りました。
 憲法を歓迎する国民と「押しつけ」といって改憲を狙う時の権力者との大きなねじれがあるとしながらも、「憲法の旗はもうぼろぼろだが、この旗ざおは決して放さないというのが国民の意思だ」と明快に訴えました。
 また、日本経済の問題でも、戦争同様に「人間の目で見るべき」と指摘。大企業に解雇された非正規労働者が集まった東京・日比谷公園の「派遣村」に触れ、「マスコミも大きく取り上げざるを得ず、1つの大きな変化をつくった。派遣労働の規制緩和を推進したトヨタやキヤノンには国民の怒りが向かっている。今年はアメリカとは違う価値観で日本の資本主義の型を変えられるのかが問われてくる」と提起しました。
 最後に、国民投票や選挙になれば、財界トップの豊田章一郎(トヨタ名誉会長)の1票も国民の1票も同じと強調し、「私たちが『改憲にノー、9条を守る』と一言いっただけでアメリカは世界戦略を変えないといけないんです。命を守る仕事をしているみなさんに、世界のあり方、これからの世界史を変える一役を担ってほしい」と締めくくりました。