今日(11月15日)、東京での明治神宮大会が開幕し、初戦で愛媛の西条が登場。おじさんはそのことにも目が離せない様子で、今秋の各地区大会の結果から来春のセンバツには「中京大中京や慶応、高松商が出るだろう」と出場を楽しみにしているところを挙げた。中京大中京の名前が出たところで「平安は数年前の創立100周年で中京大中京を呼んだ」と、急に思い出したらしく、さらに話がどんどんと繋がっていく―。
 夏の甲子園で松山商と三沢の再試合があった1969年の秋に国体が長崎で開かれた。1回戦で松山商が平安と対戦。3-3の引き分けで再試合が行われる。「再試合は確か松山商が9点。平安は0点だったか3点だったか。間違っていたらごめん」と言いながら、だから、春夏の甲子園で4、国体の1で足して平安の5連敗なのだと、決して4連敗なのではなく、国体も入れると「松山商とは5連敗」なのだということを強調する。練習試合の結果はまた違っているのだろうが、とにかく公式戦ではそうなのだと、だからこの試合でどちらが勝つのか観たかったのだと、この試合の意味づけは決して小さなものではなく、非常に大きなものであるのだと熱心さがひしひしと伝わってきた。
 「実は、西条も天敵のひとつなのだ」と50年代に全国優勝した元巨人監督の故藤田元司氏の出身校を挙げた。が、もうよくわからなくなってきた。試合はまだ3回であるが、スタンドも少しずつ熱気が帯びてきた。ふと振り返ってみると、今日はいつもと違う歓声と悲鳴が入り混じって聞こえるような気がした。
 周知の通り、龍谷大平安は夏の直前に明るみになった不祥事問題で、夏の選手権予選こそ出場を果たし府4強まで進出したものの、秋の府大会は自ら出場を辞退している。いつもであれば、新チームが今秋の府大会を勝ち上がって二年連続のセンバツ出場も狙えたかわからない。公式戦がなく、そういう意味で今日が初めて新チームが西京極球場に登場することになったというのは、平安ファンやOBにとってずっと待ち焦がれた日でもあったのだ。昨秋は府大会を優勝し、近畿地区大会で準優勝。今秋は公式戦すらない。1年1年を区切りとする高校野球でこのような光と影が生じるのが、あまりに寂しい。
 今日は平安へと注がれる気持ちを抑えていたファンやOBらが西京極に集まってきているのだろう。視線の先は、この試合の勝敗だけではないと思う。来春以降の「龍谷大平安」がどのように立ち上がっていくかということだ。
 「松山商ファンとしては平安から1点取ってほしい、取らないだろうけど、スクイズでもなんでも」と隣でおじさんが、それでもこの試合は平安が優位であることを言いたげだった。(つづく)