イラクへ薬を持って行った時、2人の用心を連れて行きましたが、怖かったですよ。命をかけて行きました。どんな格好して行っても日本人ってわかりますから、すぐに引っかかるんですね。男の人2人と私1人で、三蔵法師みたいに(笑い)。すぐ日本人だって言われて引っかかる。
 1人はイラク語ができるっていうから、頼んで連れて行ったんですよ。でもその人がしゃべってるのを聞いて相手はキョトンとしてるの。通じないじゃないの。習ったイラク語は正統なイラク語で、今は使わないような(日本語で言えば)「○○でそうろう」というような言葉なの。それでは私たち助からない。「男か女か?」って聞かれて、日本の尼さんだというと、佛教は悪い若い女の頭を坊主にするなんてけしからんとね。イスラムに改宗しようかしらなんて思いました(笑い)。
 話ができたら良いんですけど、そういう危機に何回もあいながらバクダッドに行き、隣の国で買った薬を持って行ったんですが、荷物がこないんですよ。そこで集めて車で持って行ってあげるって言うから信用してあずけたんですが、いくら待ってもこないんです。ちょうど薬のリストを持ってたんで、イラクの大使館では、この人たちは単なるボランティアで薬持って来てくれるんだから悪い者じゃないという証明書もらってるんです。
 それ1枚だけが我々の証明なんです。ぜんぜん薬が来ないからどうしようかと思いました。私たちは、病院をホテル代わりにしました。大変丁寧にしてくれるんです。私たちはイラクは戦争状態だからって、水と食料を1週間分抱えて持って行ったんです。私たちがそれを食べようとしたら、そんなことしなくていい、ちゃんとナンを持ってきてくれるんです。とても良くしてくれる。
 そうこうしてたらあらゆる病院から医者が集まり、うちにも薬をくれと奪い合いになり、私たちは神様のように扱ってくれるんですが、お金も食料もなくなって、もうありませんと。申し訳ありませんが、これは私だけのお金じゃなくて、半分はみなさんからカンパしていただいたお金なので、みなさんに報告しなきゃいけないから「薬を受け取った」って証明書いてくれないか?っていったの。モノがないのに。(笑い)