食品小売業の株式会社明治屋(本社・東京都)の「三條ストアー」(京都市中京区)に勤務していた岩田謙吾さん(当時27歳)が05年4月に死亡したのは、長時間労働の結果の過労死が原因として、謙吾さんの両親が24日、明治屋に対し損害賠償を求める訴えを京都地方裁判所に起こしました。
 訴状によると、岩田さんは05年4月8日、会社から帰宅後、就寝中に急性心機能不全により死亡しました。死亡前の半年間の労働時間が、月平均で290時間を越えるなど、長時間労働が常態化。亡くなる前の1カ月間では316時間に達し、休日は1日しか取れていませんでした。
 岩田さんは2000年4月に正社員として入社。主に調理など担当していましたが、人でが足りない場合には販売やレジなども任されるなど業務が集中していました。
 原告は被告に対し、雇用契約上の安全配慮義務違反を指摘し、9000万円余りの損害賠償を求めています。
 男性の死亡について、京都上労働基準監督署は05年11月に業務上の労働災害と認定。地方労災医員協議会は、過重労働に従事していたことが死因とする意見を出しています。今年6月には、同社と当時の店長が労働基準法違反で起訴され、罰金刑が確定しています。
 被告の明治屋は1885年に創業。高級スーパーとして知られ、全国に11店舗を展開し、食料品・和洋酒類の小売・輸出入などを手がけています。
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 京都地裁に提訴後、謙吾さんの父・忠雄さん(57)、母町子さん(58)は弁護士ともに記者会見し、決意を述べました。
 村山晃弁護士は訴状内容について説明し、「現在、長時間労働が蔓延しています。死亡した労働者に過酷な労働を課した会社の責任を明らかにすることは、他の労働者の権利を守る上でも意義がある」と強調しました。裁判では、謙吾さんの在職中の労働実態を明らかにすることが争点となることを指摘し、「従業員や元従業員などの告発や協力を求めている」と呼びかけました。
 忠雄さんと町子さんは、謙吾さんが寝床で冷たくなっていた当時の様子や休日にも出勤していたことなどをのべ、「会社がこれまで一度も謝罪をしようとしないことが許せません。一人息子を無駄死にさせないため、同じことを繰り返させないためにも、会社に責任を認めさせたい」と訴えました。