6日から国会で審議が始まった医療改悪法案。府内各地の医師会長や老人会・患者会などから反対の声を紹介します。
所得で治療が決められる社会いいのか
 私は、政府が推進する医療の「構造改革」 には反対です。医療はスウェーデンのように「公営化」 すべきというのが私の持論です。 医療は教育の機会均等と並んで国民に保障されなければならないものだと考えています。 今回の法案のように、 患者の自己負担を増やすことは、 社会保障としての医療の原則から外れることです。
 現在の日本の公的医療保険は、いつでもどこでも誰でも医療にかかれる、すぐれたものです。 医療は水道、 ガス、 電気などのライフラインのようになくてはなりません。 利権の対象にしてはならないものと考えています。 保険外診療を広げて、 民間の保険会社のもうけの対象にするべきではありません。 アメリカでは4千数百万人が医療保険に入れずにいます。 所得の格差で受けられる治療が決められてしまう社会でいいのかといいたい。
 政府は 「医療費が増えている」 といいますが、 医療費にお金がかかるのは、 製薬会社や、 医療機器メーカがもうけすぎているからです。 この無駄遣いをやめれば医療費は今の半分ですむのではないでしょうか。
 私は医師として、 憲法改定、 特に憲法9条の改定には反対です。 小学生の時に、 「あたらしい憲法のはなし」で民主主義、 主権在民、 そして戦争の放棄などまばゆい思いで学んだことを覚えています。 明治憲法にはなかったすばらしい理念です。 今、 軍事費が予算の6%に抑えられているのは9条があるからだと思います。 もし変えられることになれば、 戦前のように軍事費が増大し、 ますます社会保障費は削られるのではないでしょうか。
 私の立場は右でも左でもありません。 ただ平和で格差のない社会であってほしい、 それだけです。 多くの国民の願いだと思います。
 いずみ・たかてる 1935年徳島生まれ。 60年京大医学部卒。 京大名誉教授。 財団法人京都健康管理研究会中央診療所理事長、 所長。 九条の会アピールを支持する京都医療人の会世話人。
(「週刊しんぶん京都民報」06年3月19日付掲載)