ハツユキカズラ テイカカズラの園芸種・ハツユキカズラのピンクの花冠が出始めました。写真は伏見の桃山中学校の生け垣に絡んだ葛の先っぽから、ピンクに輝く新しい葉っぱがちょこっと可愛い顔をのぞかせはじめたハツユキカズラです。
 ハツユキカズラはテイカカズラの園芸種で、初雪が葉っぱにちょっと積もったイメージから。テイカカズラはキョツチクトウ科:学名はTrachelo(首の意)spermum(種の意)asiaticum(アジアの意):英名はstar jasmine)。和名(テイカカズラ〈定家葛〉)の謂われがおもしろいです。
 『新古今集』などを編纂した藤原定家(1162~1241:平安時代末期から鎌倉時代初期)は、歌人で、後白河天皇の皇女(式子内親王)を恋いこがれていました。そして、死後も彼女を忘れられず葛に生まれ変わって、彼女の墓石(彼の墓石とも)にまとわりついたという伝説(謡曲『定家』)から呼ばれています。定家は今で言うストーカーだったのでしょうか、しかも死後まで。怖いですね。別説には「庭下の葛」の意からとも言われています。古名は「正木の葛」「柾木の葛」と言い古今和歌集にも詠まれています。
 テイカカズラは、本州から九州の山野に生える蔓性木本で、茎は長く伸び、付着根をだして他樹や石垣やフェンスなどよじ登ります。写真は垣根のあちらこちらから覆うようにして伸びたハツユキカズラ(園芸種にはハツユキカズラやニシキテイカズラ、フイリテイカズラなど多様)で葉っぱに白い斑が入り庭木として庭園や吊鉢植えで栽培されています。花は有梗(硬い)で白地やピンクから薄黄色にかわり香りがあります。写真は葛の最先端部ですが、もう暫くすると5列の回転状(スクリュー)の形の花が咲きます。仲間にはチョウセンテイカカズラ、トウキョウチクトウ、リュウキュウテイカズラなどがあります。(小学館刊『園芸植物大事典』、柏書房刊『図説花と樹の大事典』他参考)(仲野良典)
「深(み)山には あられ降るらし 外(と)山なる まさきの葛(かづら) 色づきにけり」奥山には霰が降っているらしい。手前の山のまさきの葛が色付いている(岩波書店刊『古今和歌集』新日本古典文学全集より)