ミズヒキソウ 連日35度Cを越える猛暑日が続く京都ですが、少しは秋の気配も感じられるこの頃です。秋の季語をもつ水引の花で、山裾にある寺院や山野の林の小径のふちなどにチョコッと咲いているのを見かけるようになりました。高さ50~80センチほどで葉は楕円形、細い花穂が突き出ていて交互につぶらな花をつけます。上からは赤く、下からは白く見えてちょうど紅白の水引に似ているのでミズヒキ(水引:タデ科タデ属、Polygumun filiforme)の名前。ちなみに進物を包み「水引」で結ぶ風習は室町時代頃から盛んになった現代風で言えばリボン。この水引は、紙縒(コヨリ)を糊で固めてつくりますが、水糊を引いて塗る様から「水引」との名前がつきました。名付けも探求すれば面白いですね。
 写真のミズヒキは長岡京市にある西山浄土宗総本山の光明寺の本堂から急な階段を下りた勅使門の傍の木陰に咲いています。近くの善峯寺や京都市内の詩仙堂、高山寺、神光院などにも咲いています。しかし、光明寺も含めて、あまり人目につかない木陰のヘリにそっと咲いている控えめな野草(花言葉=飾らない性格)です。これらの寺院に訪れたときには、よく観察すれば見つけることができて、きっとこころなごむと思います。(仲野良典)
「墨を磨り
 墨を磨り
 閑かに心を澄ましながら
 わたしは 
 竹の根方の水引草をながめてゐる
 あの紅い点点の花
 その点点の一つに
 露が一つ
 光って
 揺れる
 いい朝」

  北原白秋