京都 町家の草木

錦木

ニシキギ
ニシキギ【ニシキギ科ニシキギ属】  秋の日に照る錦木の紅葉はすばらしい。この木の葉の色づきは、近年の気候の変化もなんのその。とても冴えた赤い色をみせる。名の由来もここにある。
 低木落葉樹の錦木は、その枝に不思議な特徴を備えていて、羽が生えでてくる。春に伸びる美しい緑色の若い枝には、枝分かれする一節毎に薄い香木片のような突起が葉の付け根から枝に添って対角に一対生え出てくる。次の一節では90度向きを変えて同じように一対。羽の厚みは1ミリあるかないか、巾は最も成長したもので1.5センチ程度、長さは枝の一節に従ってさまざまとなる。
 枝も臈長(ろうた)けてくると羽は木肌に埋もれるように無くなっていく。恐竜の背中を連想させる太古の趣。羽は硬質ながら非常に乾燥していて薄いので、枝の擦(す)れ合いによって次第に折れたり欠けたりして無くなるのかも知れない。錦木は花材としてよく使われる。特徴ある枝ぶりは、空間に堅い網を張るかのような樹形を作る。
 あれは、1997年の秋だった。ベルギー人のフラワー・アーティスト、ダニエル・オスト氏によって、秋をテーマにした花展がここで催された。その時、彼は庭に錦木の植わっているのを見逃さなかった。そして、錦木の枝ばかりを使って障子に映る木漏れ日を捕らえるかのような錦木の網を造形してみせた。その空間は日本の生け花とあまりに異なっていて、大いに驚かされはしたが、技法はいかにも人工的でありながら、自然の造形の姿に従った美が見事に再構成されていた。
 材木を肌で知り尽くし、江戸時代を生きた大工職人の腕が冴えたこの住宅と、オスト氏の造形とは互いに呼吸を共にし、呼応していた。
 彼もまた、自然をよく観察するアルティザン(職人)だった。
2009年11月13日 17:45 |コメント2
絵:杉本歌子 プロフィール
1967年2月13日、京都生まれ。京都芸術短期大学美学美術史卒。現在、京都市指定有形文化財となっている生家の維持保存のため、財団法人奈良屋記念杉本家保存会の学芸員・古文書調査研究主任に従事。植物を中心にした日本画を描いている。画号「歌羊(かよう)」。

受け継いだ京の暮らし 杦庵の「萬覚帳」

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コメント

こんばんは。こちらを開くたびに、植物の名前が覚えられます。ニシキギは、南天に似ているような気がします。子供の頃は、南天の枝にカマキリのたまごを見つけたものでした。この頃は、ほとんど見かけません。気候も変化して、住みにくくなったのでしょうか?淋しいですね。京都の紅葉で、おすすめの場所はありますか?

彩の国hirokoさん
 おすすめは、、、そう、岡崎あたりの街路樹のポプラがそれはそれは美しい黄色になります。木下に立って見上げると、葉の形と重なりが照って、金の国にいるみたいな気持ちになれますよ。

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