京都 町家の草木

菫
スミレ【スミレ科スミレ属】 町の真ん中。杉本家住宅の裏庭。ビルに囲まれた一角。そこに残された緑の園。
 四季に庭を彩る花々、木々の色彩の変化、昆虫たちの鳴き声、野鳥のさえずり、鼬(いたち)の走り回る姿。どれもこの庭にある。そんな裏庭で繰り広げられてきた様々な記憶を、そこに生息する草木、生き物をとおして、こっそりお話しいたします。
 裏庭の椿やモッコクの根元。大抵そこには菫が群生している。どうしたわけか、裏庭の菫は一年を通してその葉をすっかり枯らすことはない。寒中の頃でもひとつ、ふたつは群青の色を認めることができるほど強い。冬枯れの寂しい庭に、この小さな花を見つけると母はいつでも歓声を上げている。
 多く群生しているのはニオイスミレ。その名のごとく甘い香りがある。一輪でも小さな器に差して部屋に置くと、その香が一段とたつ。同じく群生しているのはミヤマスミレ。夏にツマグロヒョウモンという蝶の幼虫がこの葉を大変に好み、ここで成虫になる。
2009年4月 1日 15:57 |コメント0
絵:杉本歌子 プロフィール
1967年2月13日、京都生まれ。京都芸術短期大学美学美術史卒。現在、京都市指定有形文化財となっている生家の維持保存のため、財団法人奈良屋記念杉本家保存会の学芸員・古文書調査研究主任に従事。植物を中心にした日本画を描いている。画号「歌羊(かよう)」。

受け継いだ京の暮らし 杦庵の「萬覚帳」

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