史上空前の大量原告訴訟に

生存権裁判 2014年12月25日、京都府下に在住する生活保護制度の利用者40人が、国・京都府・京都市などを被告とし、厚生労働大臣が行った生活扶助基準の引き下げが違憲・違法であるとして、基準「引下げ処分」の取り消しと国に対する1人あたり1万円の損害賠償を求めて京都地方裁判所に提訴しました(その後の追加提訴により、原告は、54人)。
 この事件は、生活保護(扶助)基準の「引き下げ」処分の取り消しを求める集団訴訟としては、全国で18番目(さいたまの本人訴訟を加えれば19番目)の提訴で、原告は、約590人にのぼっています。今後も全国各地でさらなる提訴が予定されており、生活保護の歴史上空前の大量原告の訴訟となることは確実です。

格差の拡大と貧困化が原因

 私たちは、この裁判について、京都をはじめ全国9つの裁判所で争われている老齢加算・母子加算の削減、廃止の違憲・違法性を問うた「生存権裁判」をさらに発展させた裁判という意味で、「新・生存権裁判」と呼ぶことにしました。
 もともと、生活保護を利用している人たちが国や自治体を相手に訴訟を提起することは、決して簡単なことではありません。にもかかわらず、このように、史上空前の人数で提訴がなされたのは、第1に、日本における深刻な「格差の広がり・貧困化の進行」の事実があります。アベノミクス政策は、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなるというまさに格差の拡大と深刻な貧困化政策そのものなのです。このため、生活保護制度利用者は、2014年3月には217万1139人と最多数を更新し続けています。
 第2には、「引き下げ」の違憲・違法性があります。今回の「引き下げ」は、結論先にありきの引き下げでした。もともと、生活保護基準のあり方について検討していた社会保障審議会生活保護基準部会では、安易な引き下げにはむしろ慎重な意見書をまとめていました。
 にもかかわらず政府は、突然に、この部会で全く検討がされなかった「物価の動向」(デフレ)を理由に、生活保護基準を3年間で総額670億円(平均6.5%、最大10%)引き下げるという方針を決めたのです。しかも、この結論を導き出すために、厚生労働省は、「生活扶助相当CPI」という「偽装物価指数」を取り入れたごまかしの数字操作までしています。
 この結論には、自由民主党の政策として、生活保護基準10%削減を掲げていたことが大きく影響していることは間違いありません。つまり、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する憲法25条にも、生活保護法3条、8条にも反する引き下げなのです。

「低劣な基準は死を意味する」

 本来「格差の広がりと貧困化の進行」を防ぐためには、(1)労働の現場での非正規雇用の規制、最低賃金の引き上げ(2)年金額の引き上げ、医療保障の充実、雇用保険の失業給付の充実など社会保障給付の拡充、(3)生活保護基準の「引き上げ」こそが必要です。ところが、政府が行った対策は、全く反対の方向でした。
 生活保護基準の引き下げは、最低賃金の額の引き上げを不要とし、基礎年金の給付水準も減額して良いということにもなりかねません。また、「就学援助」の基準も厳しくなり、住民税の非課税基準、国民健康保険の保険料や窓口負担の減免、介護保険料の軽減基準、保育料の徴収基準なども厳しくなります。
 この国において、生活保護基準のあり方を最初に問うた「朝日訴訟」の原告・朝日茂さんは、「低劣な生活保護基準のおしつけは、死を意味する」「私の怒りは、私1人だけの怒りではない。多くの貧しい人びと、低い賃金で酷使されている労働者の人びと、失業した人びと、貧しい農漁村の人びと、みんな私と同じように怒っているはずだ」「闘うよりほかに、私たちの生きる道はないのだ」と訴えています。
 本件の原告もまさに、同じ思いです。この国から貧困をなくしたいと思う多くの方々と連帯した闘いである「新・生存権裁判」に心からご支援をお願いします。(「週刊しんぶん京都民報」2015年2月8日付掲載)