20141104-01.jpg 日本の3大薬草と言えばドクダミ、ゲンノショウコウとセンブリです。その一つセンブリは知っていても花はあまり知られていません。今がちょうどセンブリの開花期で、小さな花を星状に咲かせています。
センブリはとても苦い薬草で、しかも千回振りだしてもまだ苦みが残っているので「センブリ」とう面白い粋な名前がつきました。分布は日本の全土、中国から朝鮮半島で原産地も含めると北米やヨーロッパと広くそれだけ古くから各地に生えていたようです。室町時代に胃腸薬として日本で開発された民間薬です。消化不良や食欲増進など胃腸薬として庶民の間で活用されました。そこから別名「当薬(トウヤク)とも言われています。
花は写真のように星型でパッと開いて花冠は5つに深裂していますが、元は繋がっています。裂片は白色で紫色の線状が縦に走っています。裂片の元にはもじゃもじゃした毛が左右に並んで生えています。
ところで民間薬としては、花も含めて全草を採って日干しして乾燥させます。胃腸薬だけでなく、そのエキスは頭髪の根毛を刺激して発毛促進の効果があるそうです(『原色日本薬用植物図鑑』保育社や『原色牧野和漢薬草大圖鑑』北隆館など参照)。
センブリはリンドウ科に属しています。センブリの花が咲いている所には近辺には紫色のリンドウの花も見られます。写真にも4コほどのセンブリの花のつぼみが見えるでしょう。リンドウによく似ているのがよくわかりますね。センブリは現在では薬草用に栽培されていますが、写真は「天空の城」と人気抜群の竹田城界隈の山道の足下に咲く野生のセンブリの花です。やはり近辺には自生するリンドウの花が咲いていました。野生しているリンドウの花もめったにみられなく、しかも花が開いており思わず感動しました。(仲野良典)
 
 「千振の花や誰かに文をせむ」(水野宗子『角川俳句大歳時記』より)