岡田知弘教授講演「ふる里の今と未来」 山村の暮らしと未来、地域経済のあり方を考える集いが17日、宮津市の元下世屋小学校講堂で行われ、丹後半島一円から152人が参加しました。
 主催は「ふるさと会議世屋」。京都大学の岡田知弘教授が「ふる里の今と未来~活きていこうこの村で」と題して講演しました。
 岡田氏は、東日本大震災が問いかけたものは東京一極集中型の危うさであり、原発依存の危険性、住民の命や暮らしを守る国や自治体のあり方だと指摘。人が生きて行くためには何よりも大切な命とそれを育む「里」が重要で、地域に固着した住民や企業、産業を大事にすべきだとのべ、「地域経済活動の最大の主体は中小企業、農林水産業、協同組合、NPOではないか」と強調しました。
 政府が交渉参加にむけ協議を進めているTPPは、あらゆるモノやサービス、取引、投資、労働、政府・自治体の調達契約、食品、医療、建築などの非関税障壁に関わる多国籍企業の「自由」と「経済的利益」を保障する不公平な条約で、農林漁業だけでなく、地域経済も国家主権、国民主権も破壊すると告発。さらに2年後に予定されている協定締結後4年間、交渉内容は非公開という異常な契約だと述べました。
 また岡田氏は、地域が活性化する、豊かになるとは、住民1人ひとりの生活が維持され向上することであり、地域内の経済活動をいかに高めるかにあると指摘し、大分県の湯布院町と長野県栄村の地域活性化の取り組みを紹介。「農林水産業の営みは自然環境の再生産であり、国土保全に寄与する。地域の“宝物”を発見したり、人と人、人と自然の関わりで地域を再生して行く営みにこそ未来がある。グローバル競争に左右されない個性あふれる地域産業と地域社会の再構築こそ必要ではないか」と呼びかけました。
 参加者の男性は「自分たちが何をやるべきか、見えて来た気がする。この村に人が来てくれるよう、私たちも発信していきたい」と話していました。
 集会に先立って宮津市エコツーリズム推進協議会世屋・高山ガイド部会による「天空の里・世屋を旅する」とした世屋5地区をバスで巡る企画が行われ、21人が参加しました。同協議会のガイドによる地域の概要や歴史の説明を受けながら、きれいな水で紙すきが行われていた畑地区や地元民で再生した古民家、棚田の広がる上世屋などを見学。各地域での演芸会や有機米作り、加工グループの取り組みなども紹介されました。