野田政権が、関西電力大飯原発の再稼働を妥当とする判断を示したことを受け、日本環境学会(和田武会長)は15日、「再稼働はやめるべき」との会長声明を発表しました。以下、全文を紹介します。

日本環境学会会長声明
「原発再稼働をやめ、安全で持続可能なエネルギー社会を目指すべきである」

 2012年4月13日、野田政権は原発関係閣僚会議を開催して、停止中の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働問題について再稼働を妥当とする判断を示した。その理由として、政府が定めた「安全性の判断基準」を満たしたとする「安全性」と電力不足回避のための「必要性」を挙げている。しかし、いずれの理由も科学的客観的な説得性に欠けるものと言わざるを得ず、再稼働はやめるべきである。
 安全性については、その判断基準として挙げている関西電力の中長期的な安全対策の実施計画(工程表)では、水素爆発防止装置は2013年度までに設置し、事故時の収束作業に不可欠な免震事務棟や、フィルター付きベント設備、恒設非常用発電機はいずれも2015年度までに設置するなどの計画を含み、現時点で完備しているものではない。したがって、過酷事故に対する安全性を確保できているとは言えないことは明らかである。しかも、福島第1原発事故が未だに収束しておらず、その原因究明も不十分な状況では、安全性確保の条件さえ十分に解明されていないのである。
 必要性に関しては、再稼働がない場合の電力不足を挙げているが、これも需要ピーク時電力の抑制策などを想定せず、単に関西電力管内の電力供給量が過去のピーク時電力の実績以下になることを根拠にしているだけである。しかも、不足するとされる期間もきわめて短時間に過ぎないのである。これまで、本学会が発表した声明など、いくつもの研究結果が明らかにしているように、省エネ、エネルギー効率改善、国内の各電力会社間の電力融通等によるピーク時電力需要の抑制、再生可能エネルギー電力の普及促進や電力貯蔵システムの整備などの対策を採れば、電力不足は生じない。再稼働を強行するのではなく、国民や産業界の協力を得ながら、このような電力不足を回避するための積極的対策を採るべきである。
 原発の過酷事故の再発防止は全国民の願いである。政府は、安全で持続可能なエネルギー構造を実現するために、原発の再稼働をやめ、国民の協力を得ながら、省エネの取り組みや再生可能エネルギーの導入を積極的に推進するよう強く要請する。

2012年4月15日  日本環境学会会長 和田 武