京都の著名な学者・専門家9氏が3日、京都から「原発ゼロ」のアピール運動を呼びかける訴えを発表しました。9氏を代表して安斎育郎・立命館大学名誉教授ら5氏が同日、京都市上京区の京都府庁内で記者会見し、訴えを発表しました。
 呼びかけ文全文は次の通りです。


“福島”から6カ月─いま、京都から、よびかける(京都アピール)

2011年10月3日

 【呼びかけ人】
   浅岡美恵  弁護士、NPO法人気候ネットワーク代表
   安斎育郎  立命館大学名誉教授、放射線防護学・平和学
   飯田哲也  NPO法人環境エネルギー政策研究所長
   大島堅一  立命館大学教授、環境経済・政策学
   竹濱朝美  立命館大学教授、環境社会学
   深尾正之  元静岡大学教授、物理工学・原子炉物理
   宮本憲一  元滋賀大学学長、財政学・環境経済学
   ヨハン・ガルトゥウング  国際NGO TRANCEND(トランセンド)代表
   和田 武  日本環境学会会長、立命館大学名誉教授
 3月11日の東日本大震災による原発事故、放射能災害が発生して6カ月余。日本の原発・エネルギー政策、人々の生活と物質文明、さらには国や地方自治体のあり方をめぐって、広範な議論が始まっている。そして、多くの国民が“原発に頼らない”エネルギー政策を求め始めている。
 14基もの原発群が集中立地する若狭湾沿岸から、ほぼ全域が半径30キロから80キロ圏内に入る京都において、その現実が内包する危険性を直視し、いま、原発政策・エネルギー政策のあり方を府・市民レベルで真剣に検討・模索すべき時である。
 京都は、大学と学問の街、歴史と文化が息づく都市であり、年間5千万人もの人々が訪れる観光都市である。人知では制御不能となる原発事故がひとたび起これば、京都府民の命綱ともいうべき琵琶湖が汚染され、先人が築きあげてきた文化や遺産、産業は深刻なダメージを受け、京都での社会生活は長期にわたって深刻な打撃を受けるに相違ない。
 しかも、私たちはもう一つの厳しい現実を直視しなければならない。14基の若狭原発群のうち8基が30年以上運転を続ける高齢原発であり、うち35年以上が5基、敦賀原発と美浜原発1号は40年以上も運転を続けているという事実である。さらに、プルトニウムを燃料とする高速増殖炉「もんじゅ」が、重大な事故の果てに運転を停止している。その上、若狭湾周辺が、アムール・プレート東縁変動帯(地震活動帯)に存在し、今回の巨大地震の影響で広範囲の地域にひずみがたまり、活断層による内陸型の大地震が続発する可能性も指摘されている。実際、1662年寛文地震、1891年濃尾地震、1927年北丹後地震、1948年福井地震など、M7以上の大地震がこの地域で起こった歴史を忘れてはならない。
 原発はいったん事故が起これば制御不能に陥る危険があり、その場合、地域社会が崩壊の危機に瀕することを今回の福島の事故は明らかにした。また、原発は、何の価値も生み出さない膨大な放射性廃棄物の処理・処分を未来世代に委ねることを前提としており、倫理的にも重大な問題を孕んでいると言わなければならない。
 戦争の惨禍を教訓に新しい憲法を生み出した経験を想起し、また、ドイツが20年余の国民的討論の果てにエネルギー政策の転換に舵を切った事実にも学びつつ、私たちは、現実を直視した対話と討論を起こすことを求められている。いま、私たちはフクシマの現実を直視し、科学者や専門家、各分野の識者が政治的立場や考え方の違いを超えて広く対話し、発言し、行動する時ではないだろうか。エネルギー政策を国や企業だけに任せるのでなく、市民と地域が主体的に議論し参加する「エネルギー・デモクラシー」ともいうべき運動を起こそうではないか。
 私たちは、いま、京都から、広い対話と共同、賛同の輪が広がることを、心よりよびかける。

  1. 「原発ゼロ」も視野に、原発政策の抜本的転換、再生可能な自然エネルギーの本格的導入、省エネルギー社会の実現をめざして力を合わせよう。
  2. 京都から30~80キロ圏内の若狭地区に危険な原発が集中立地されていることはあまりにも異常であり、「若狭に原発はいらない」をかかげ、京都府・市民と原発立地自治体・住民が共同して、豊かな環境と産業、暮らしの将来展望を切り拓こう。
  3. 「原発は必要」「やむをえない」と考えている人々も含めて幅広い対話と討論を広げ、府民・市民の声をふまえた「エネルギー・デモクラシー」「エネルギー自治」の京都をめざそう。

 これらの諸点についての賛同のアピール運動、「京都から1万人の賛同・メッセージ運動」を起こし、大きく広げよう。
 【メッセージあて先・連絡先】
 HP:原発政策転換の一万人アピール
 FAX:075・741・7282