先日、先生の講演を聞きました。ヨーロッパなど欧米や韓国などに比べて日本の労働条件は非常に悪いと言っておられました。女性の働き方の問題では、どんな違いがありますか?

女性の非正規雇用による差別的扱い

(60)欧米、韓国と比較〈3〉イラスト・辻井タカヒロ

 日本は先進国の中で、男女平等についての多くの指標がきわめて低くなっています。政治、経済、社会の各分野における女性の地位は、世界130国中、日本は第98位、先進国では最下位でした(「世界経済フォーラム」2008年調査)。
 とくに雇用における男女不平等は深刻で、女性の正社員は46.5%と過半数を下回わり、パートや有期、派遣など非正規雇用のほうが多くなっています。そして賃金については、男性を100としたとき、日本の女性はその66.6%にしかなりません。EUやアメリカと比べても大きな格差です(国際労働組合総連合調査)。
 日本の男性は多くが正規雇用として働くことが慣行となってきました。これに対して女性は、結婚・育児を理由に7割が退職し、子育てが終わってから非正規雇用(主にパート)で就業するという、世界に例がないM字型就業カーブを描きます。
 以前は、女性も学校卒業後、正社員に採用されましたが、85年に男女雇用機会均等法(均等法)が制定された後、経営者は、労働者派遣法も活用して、女性を派遣労働や有期雇用などの非正規雇用に切り替えてきました。
 07年、ILOは日本に対して、男女賃金格差の放置、不十分な内容のパート労働法、同一価値労働同一報酬原則を定めた法律がないことなどの問題点を指摘しました。09年8月には、国連の「女性差別撤廃委員会」(CEDAW)が、「間接差別」を含む男女差別の定義を法律で定めること、妊娠・出産による違法解雇防止、男女職務分離の撤廃、賃金格差の是正などを日本政府に厳しく求めました。
 たしかに均等法施行後、明らかな男女差別は禁止されました。しかし、女性の多くは若いときは派遣や有期雇用に、結婚後は被扶養者として年収100万円前後のパートで働くなど、つねに非正規雇用になる傾向が強まっています。
 こうした慣行は、日本の女性を雇用面で差別的に扱うものであって、まさに「間接差別」にあたると国際的に指摘されているのです。(「週刊しんぶん京都民報」2010年5月9日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。