製作会社の子会社に派遣で、3年働いています。1カ月の手取りは12万円で、30時間の残業をこなして、やっと16万円、一時金は0.8カ月分だけです。同じ仕事をしている正社員の給料の半分、一時金は6分の1 で、契約更新も半年ごと。いつ解雇されるかわからず、不安でたまりません。正社員になんとかなりたいのですが。(31歳、男性、京都市)

派遣期間超えたら直接雇用の義務

(14)正社員になりたいイラスト・辻井タカヒロ

 担当業務によっては派遣先への正社員雇用を求めることができます。
 労働者派遣法は担当業務によって派遣期間を区別し、一定の制限をしています。1999年改正前の派遣対象26業務についてはこの期間制限がありませんが、それ以外の業務は原則1年(派遣先過半数代表の意見聴取を要件に最長3年) です(法40条の2第3項)。もし、担当業務が26業務以外であれば、派遣期間を超えた時点で派遣先は派遣労働者の受入れができず、労働者に直接雇用を申し込む義務が生じます(法40条の4)。
 従わないときには、労働局に直接雇用するように派遣先への行政指導を求めることができます。
 ただ、法的にはそうであっても、派遣労働者が一人だけで会社に対抗することは簡単ではありません。
 同じ立場にいる仲間がいれば複数で声をあげることが重要です。実際には、地域労組に援助を受けて知識と力を蓄えながら、労働局などを活用するなどの方法で雇用と労働条件の改善を求めることが必要です。
 派遣先の組合が取り組めば解決の可能性が高まりますが、残念ながら、企業別正社員組合が派遣労働者の悩みを受け止めて支援する例は多くありません。しかし、幸いなことに、誰でも個人で加盟できる地域労働組合が京都でも活動を始めています。職場で孤立しがちな派遣、請負、アルバイトなど、非正規雇用の労働者から相談を受け、労基法違反問題などで援助していますので、相談してみて下さい。
 なお、日本の労働者派遣法は、労働者保護が世界でも最低の悪法です。フランス、ドイツ、韓国などの派遣法と違って、同じ仕事をしている正社員よりも派遣労働者の条件が低劣であることがほとんどであるのに、差別待遇にあたるとして規制する条文がありません。いま国会では、日本の派遣労働制度の改善を目的にし、派遣労働者保護を強める方向で派遣法改正が論議されています。(「週刊しんぶん京都民報」2008年6月15日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。