今年の4月、引越会社に入社した時に、社会保険や年金、雇用保険はどうすると聞かれたので、20万円あるかないかの給料から引かれたら生活できないので、要らないと答えました。親からは、社会保険に入れるのは会社の義務だから、聞くこと事態おかしいと言われてしまいました。保険には入っておくべきでしょうか。(24歳、男性、京都市)

強制加入以外に選択の余地なし

(12)社会保険入るべき?イラスト・辻井タカヒロ

 会社の言い分は間違いです。強制加入ですので、加入以外に選択の余地はありません。加入しないと、思わぬ不利な状況に追いやられる危険もあります。
 会社に就職したら、健康保険と厚生年金保険(正しくは、この両方が「社会保険」です)と、雇用保険と労災保険に加入することになります。労災保険は会社だけが保険料を払いますが、他の3つは毎月の給料から一定割合で天引きされます。社会保険では給料額に応じて「標準報酬」が決まっており、それに保険料率を掛けて保険料額が算出されます。
 2008年5月現在、政府管掌健康保険は保険料率が1000分の82ですので標準報酬月額が20万円であれば1万6400円、これを労使折半負担しますので労働者負担は月8200円です。同様に、厚生年金保険料の労働者負担は月1万4996円です。また、雇用保険は月1200円と推計できます。
 他方、20歳以上であれば学生や無職でも国民年金保険料を月1万4410円納付しなければなりませんが、厚生年金保険加入であれば、ほぼ同額負担で国民年金保険料を別に納めなくてもよくなります。年130万円以上の収入ですから、もう親の被扶養者になれません。会社で健康保険に加入しなければ、京都市の国民健康保険に加入することが考えられますが、その保険料は非常に高く、月20万(年収240)円であれば年約25万円(月2万円以上)です。健康保険料の8200円をかなり上回ります。
 また、健康保険には国民健康保険にはない給付として休業4日目から「傷病手当金」(標準報酬日額の6割)が支給されるなど、多くの点で有利な仕組みがあります。雇用保険も、保険料額が安いのに比べて、失業給付以外に教育訓練給付など多くの給付があります。
 このように社会保険や雇用保険は保険料面でも給付面でも労働者には有利な制度です。加入したいのに会社が加入させてくれないという相談が少なくありません。迷わず加入するべきです。(「週刊しんぶん京都民報」2008年6月1日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。