ムラサキシキブ 伏見区深草の山裾にある静寂な嘉祥寺(かしょうじ)の境内に美しい紫の小さな球の実をいっぱいつけたムラサキシキブがあります。和名のムラサキシキブ(ミムラサキ・コメゴメとも言う)は果実の美しさを紫式部の名を借りて付けられたと言います。学名のCallicarpa japonicaも「日本の美しい果実」という意味です。
 嘉祥寺は平安時代初期の851年(嘉祥8年)、文徳天皇が、仁明天皇の菩提を弔うために、その陵の傍らに清涼殿の建物を移して寺院とし開設され、年号をとって嘉祥寺としたと記されています。当初は広大な寺域と五重塔もある伽藍を誇った寺院でしたが衰微し、特に応仁、文明の大乱で焼亡しました。江戸期の元禄時代に、空心律師が聖天尊(俗に深草聖天と呼ばれ信仰されている)も祀って旧嘉祥寺に少し離れた場所に再興されました。(仲野良典)