下谷さんの子どもたちが使っているアレルギー疾患の処方薬

日本共産党は保険外しに反対し、国会で追及

 医師が処方する痛み止め、アレルギー性鼻炎や花粉症などの治療薬が保険適用から除外となり、薬代が現行の30~40倍に跳ね上がるかもしれない──こんなとんでもない改悪案が、先月13日に閣議決定された政府の「骨太の方針2025」に盛り込まれました。保険外しを推進しているのは自民、公明、維新、国民の4党です。日本医師会は反対を表明し、患者会などが保険適用の存続を求めて政府に申し入れるなど、反対運動が始まっています。京都府内でも4党への怒りとともに、保険外しに反対する日本共産党への期待が広がっています。

 「骨太の方針」に盛り込まれたのは、「現役世代の保険料負担の軽減」を口実にした、「OTC類似薬の保険給付の在り方の見直し」です。この他に病床削減なども示し、「実現可能なもの」について「2026年度から実行する」としました。

 「OTC」とは「Over The Counter」の略で、薬局で医師の処方箋なしに購入できる市販薬が「OTC医薬品」と呼ばれています。

市販薬では価格40倍も

 「OTC類似薬」は、医師が処方した薬のことです。成分や効果は市販薬と同じでも、保険適用のため自己負担1~3割で購入できます。一方、市販薬は、製造や流通にかかわるコストや宣伝広告費なども加わり、40倍も価格が高くなる場合もあります。

 政府は、医療機関や患者の声も聞かず、強引にOTC類似薬の保険外しを進めようとしており、反対の世論と運動が全国で広がり始めています。

受診控え、負担増・・・日本医師会や保団連は反対表明

 日本医師会や全国保険医団体連合会、全日本民医連は、それぞれ○医療機関への受診控えによる健康被害○経済的負担の増加○薬の適正使用が難しくなる─とし、保険外しに反対を表明しました。

 患者やその家族からも保険適用継続を求める声が相次いで上がっています。

 生まれつき全身の皮膚が乾燥して硬くなる魚鱗癬(ぎょりんせん)の患者やその家族らが、保険適用の継続を求めてオンライン署名を開始。「全身に塗る保湿剤が1回の治療で2000円だったのが、保険から外れれば6万円以上かかる」「物価高の上に保険適用外? 生きていけなくなってしまう」「実質、死の宣告だ」などとするアトピー性皮膚炎の患者らのコメントも添え、先月、8万5571人分の署名を厚生労働省に提出しました。

 認定NPO法人「日本アレルギー友の会」や「アレルギー児を支える全国ネット」など7団体も同様の申し入れを実施。NPO法人「日本アトピー協会」も6月27日から、オンライン署名を緊急に始めました。

 京都でも、保険外しの案に痛切な声が上がります。「うちの子どもたちが使っている薬が保険から外れるかもと聞いて、びっくり。市販で買えば、毎月3000円から5000円、年間で6万円もかかるんです」

 こう話すのは、京都市内に住む下谷美緒さん(45)です。二人の子ども、小学4年生の温大(はるた)さんと1年生の奏大(かなた)さんは、ハウスダストによるアレルギー疾患で、通院と処方薬が欠かせません。

 京都市ではようやく23年9月から、小学6年生までの通院医療費が無料になったものの、保険適用外となれば自己負担です。

 アトピー性皮膚炎の罹患(りかん)率は小学生では約15%、何らかのアレルギー疾患を抱える小中学生は約35%と、特別な病気ではありません。アレルギー性鼻炎や花粉症を抑えるアレグラ錠やアトピー性皮膚炎の症状を抑える保湿剤のヒルドイドクリームなどは、OTC類似薬です。

 下谷さんは「保険外しが子育て世代を直撃するのに、『現役世代の負担軽減』なんて、おかしいじゃないですか。安心して医療が受けられるようにすることは政府の責任。そのために税金があるんでしょう」と訴えます。

処方されている痛み止めや湿布薬を手に不安を語る広瀬さん

痛みに耐えかね誤った飲み方も

 関節リウマチを患い、患者会の会長も務めてきた広瀬東栄子さん(80)=京都市=は、市販薬を自己判断で服用すれば、症状悪化の可能性もあると訴えます。

 「寝ていても体中がギシギシと痛い」。こうした関節の炎症を抑え、痛みを和らげるための薬、OTC類似薬のロキソニン錠が多くの患者に処方されていると言います。「医師の指導がなくなれば、痛みに耐えかね薬を乱用したり、間違った飲み方をしたりする人が出ないか、それが何よりも怖い。重症化して医療費は増えるかもしれない」。

 下谷さん、広瀬さんは口々に訴えます。「国民が安心して医療にアクセスできるようにすることは、政府の責任のはず。税金の使い方を変えて、医療・福祉の充実を最優先にと訴える共産党の出番です」

菅野さん

患者の命、健康に多大な影響

かどの三条こども診療所所長、小児科医 菅野友子さん

 保険料負担の軽減を口実に、政府がOTC類似薬の保険外しを検討するとしたことに怒りを覚えます。

 小児科の患者さんで最近多いのが習慣性便秘症で、マグミット錠をよく処方します。保険適用から外されれば、子どもの医療費無料化制度があっても、薬代が自己負担となるだけではありません。たかが便秘と考えがちですが、処方してもらえないならと受診しなかったため、便秘が重症化することにもなりかねません。

 確かに、保険適用外となれば一時的には医療費が減り、保険料は下がるかもしれません。

しかし、長期に見れば、受診抑制で疾患の重症化を招き、医療費がかえって増大するだけでなく、患者の命と健康に多大な影響を及ぼすことになります。絶対に実施してはいけないと思います。

 共産党はこの問題をいち早く国会で取り上げてくれました。生死にかかわる問題と追及し、政府に見直しを求めるとともに、参院選公約で保険給付外しに反対すると言ってくれています。

 ぜひ、参院選での躍進と京都選挙区での倉林明子参院議員の再選を切望します。

 

「国民民主」が先べん「維新」が前のめり

国民民主の政策が発端

OTC類似薬の保険外しの問題が浮上してきたのは、昨年10月の総選挙からです。国民民主が同選挙に向けた政策として、「医療制度改革」を発表。その中で、「現役世代・次世代の負担軽減」を図るとし、重点政策事項に「(OTC類似薬を)公的医療保険の対象から見直す」と明記したことが発端です。

 さらに、OTC類似薬の保険外しに前のめりになっているのが、日本維新の会です。今年1月27日の衆議院代表質問で、共同代表の前原誠司議員が医療費削減のために保険外しを要求。4月17日に開かれた社会保障改革に関する自民、公明との3党協議では、保険給付から除外する医薬品として28有効成分をリストアップして提示。最大1兆円の給付削減ができるとして、自民、公明に保険外しを迫りました。

医療費抑制推進 自民“渡りに船”

 維新や国民の要求は、自民党にとっては“渡りに船”でした。もともと自民党は公的医療費抑制策を推進してきました。特に01年には「聖域なき構造改革」として、医療費構造改革を政府の基本方針に据え、抑制路線を本格的に進めてきました。医療費抑制の点では、維新などとの大きな政策的違いはなく、3党合意となったものです。

 一方、日本共産党は、保険給付外しに一貫して反対するだけでなく、いち早く国会で追及してきました。

 3月の衆院予算委員会では「現在の薬剤費の自己負担分の20~60倍もの負担を迫られる」と、具体例を示して保険外しの見直し・撤回を要求。また、「骨太の方針」に盛り込まれたこと受け、6月18日の衆院厚生労働委員会で「命にかかわる問題。保険外しを絶対にやってはならない」と政府に迫りました。

 参院選挙での公約では、保険給付外しに反対すると明記しました。

OTC類似薬の保険外しを掲げた、維新の参院京都選挙区候補のビラと国民民主の政策ビラ