私の知り合いが東日本大震災で被災し、命は無事でしたが、家を失い、職場も津波で流されたそうです。もし会社が休業したり、解雇されたら、生活の保障や仕事などどうしていったらいいのでしょうか。(30歳、女性、京都市)

震災が直ちに正当な理由にはならない

(82)被災理由による解雇イラスト・辻井タカヒロ

 現在、東日本大震災の影響によって企業の休業や解雇、内定取消が広がっています。大震災だからといって、それが直ちに解雇の正当な理由になる訳ではありません。
 阪神大震災で、取引先が被災し売上高が減少した会社が従業員を解雇した事件で、業績悪化が一時的であり、役員などの給与減額で解雇を避ける措置がなかったとして解雇を無効とした判決があります。被災企業への公的支援もありますので、経営者が業務を継続して、できるだけ解雇や内定取消を避けるために努力することが必要です。
 また、会社が不況などで休業するとき使用者は労働者に「休業手当」(賃金の60%相当額以上)を支払う必要があります(労働基準法26条)。ただ、天災等による休業は例外とされており、今回の大震災については職場が津波で流されるといった直接的な被害であれば、使用者は、休業手当の支払義務がないことになります。
 厚生労働省は「計画停電」などによる休業でも、休業手当の支払義務がないと通達して強い批判を受けています。
 しかし、厚生労働省は雇用保険の特例措置として、事業所の廃止・休止による休業で賃金が支払われない場合、実際には離職していなくても失業給付を受けられることにしました。
 一つは、「激甚災害法の雇用保険の特例措置」(休業する場合)で、被災事業所が休止・廃止されて、労働者が休業せざるを得なくなって賃金を受けることができない場合、実際に離職していなくても雇用保険の基本手当を受給することができます。
 さらに、「災害救助法の適用地域における雇用保険の特例措置」(一時的に離職する場合)で、災害救助法の指定地域(岩手、宮城、福島の三県と茨城県の一部)にある事業所が被災して事業が休止・廃止し、事業再開後には再雇用が予定されている場合であっても、雇用保険の基本手当を受給することができます。この基本手当の受給日数は勤務年数(加入期間)に応じて決まります(最低90日)。(「週刊しんぶん京都民報」2011年4月17日付

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。