非常勤嘱託職員として市役所の福祉関係の課で働いています。職場では正規職員より嘱託の方が人数が多く、お金を扱う仕事なども嘱託が行い、仕事量も正規職員と変わりません。それでも、給料は手取りで14万円。正規の半分以下です。扶養手当、住宅手当はもちろんつきませんし、交通費も全額支給されません。こんな格差でも、やむを得ないのでしょうか。(38歳、女性)

同一労働同一待遇が労働法の基本ルール

(16)正規と嘱託に格差イラスト・辻井タカヒロ

 労働法の基本ルールの一つは、「同一(価値)労働同一待遇」の原則です。労働基準法は、第3条で国籍、信条又は社会的身分を理由とした賃金、労働時間その他の労働条件についての差別的取扱を禁止し、同法第4条では男女賃金差別を禁止しています。
 ご相談の場合は、嘱託職員を正規職員に比べて悪い労働条件で働かせており、非常勤嘱託という「社会的身分」を理由とする差別的取扱にあたると思います。ただ、労働行政や裁判例では、嘱託職員などの非正規雇用は、労働者が自由意思で選択して合意したのだから、「社会的身分」ではないと言うのです。
 しかし長野県の丸子警報器事件では28人の既婚女性パート(臨時社員)が、正社員とほとんど同じ仕事をしているのに賃金が約6割、年150万円もの格差があるのを差別だと訴えました。長野地裁上田支部は1996年3月15日、「同一(価値)労働同一賃金の原則」は「人格の価値を平等と見る市民法の普遍的な原理」であるとし、臨時社員の賃金を正社員の8割以下とするのは公序良俗違反で無効という画期的判決を下して訴えを認めました。
 また、京ガス事件・京都地裁2001年9月20日判決は、職種が異なる男性との賃金面での差別扱いの不当性を訴えていた女性について担当職務が男性の職務と価値に差はないとし、労働基準法第4条に反する女性への賃金差別であると認めました(05年12月8日、高裁で勝利和解)。
 このように民間企業では差別を認める判決が出ていますが、自治体職場には公務員法の壁があり、民間での法理が通用せず、「法の谷間」となっています。
 ただ、自治体は民間企業に平等や均等待遇を啓発する責務があり、自らの差別扱いを積極的に肯定できません。現実には非常勤問題に取り組む組合に相談して支援を受け、できれば同じ立場の人が複数で声をあげて不当な実態を社会的に訴えることが重要だと思います。そうしたなかで改善への道が開かれると思います。(「週刊しんぶん京都民報」2008年6月29日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。