半年前に、電気工事の仕事中に転落し、骨折。会社から「自宅の事故にしてくれ」といわれ、医者にもウソを言い、社会保険事務所からの照会状にも「自宅の事故」と書かされました。治療費は出たものの、20日後に解雇され、後遺症で再就職出来ず困っています。(57歳、男性、久御山町)

労災であると早く主張する

(6)「自宅での事故にしろ」イラスト・辻井タカヒロ

 骨折や後遺症、大変でしたね。
 まず、仕事中のケガや病気は「業務上の傷病」となりますので、労災保険から療養補償給付(治療費の全額)と、休業4日目から休業補償給付が出ます。休業補償給付は給付基礎日額の60%ですが、別に出る休業特別支給金とで計80%になります。賃金の約8割が休んでいる間もらえることになります。この労災保険の権利は退職した後も継続して受けられます。
 労災保険給付は使用者に対してではなく、労働基準監督署長に請求します。ご相談の場合、まだ半年前ですので、法的には労災保険給付請求をすることが可能です。
 また、労働基準法第19条は、業務上の傷病での療養中とその後30日間は使用者に解雇を禁止していますので、解雇は法的には明らかに無効です。労災保険とは別に、労働基準法第76条に基づいて、休業3日目までの休業補償を会社に請求できます。
 会社の対応は、「労災隠し」です。本来なら、休業4日以上の労働災害により労働者が死傷した場合には、遅滞なく、監督署に「労働者死傷病報告」する義務があります(労働基準法施行規則第57条、労働安全衛生規則第97条)。この義務違反には罰則もあります。
 事故の際、会社の言い分を拒否して労災扱いにしておくべきでしたね。間に合いますので、「労災」であったことを早く主張して下さい。その根拠を示す必要が生じますが、労働行政は「労災隠しは犯罪です」と事業者を指導していますし、労働者自身が会社と対決する気持ちを強くもてば解決への第一歩となります。
 「いのちと健康を守るセンター」等に相談すれば、アドバイスを得て労災保険の手続を進め易くなりますし、会社を相手に解雇撤回や損害賠償を求める交渉も可能となります。(「週刊しんぶん京都民報」2008年4月13日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。