京都 町家の草木

丸葉満作と油蟬

万作
マンサク【マンサク科マンサク属】
 夏の満作は濃く深い緑。葉はビロードの手触り。しっかりとしている。
 うっそうと茂った庭の片隅に植えられている満作は、背丈が低く、すっかり木立の影になって気に留められることもない。でも、木の葉に惹かれてひと枝部屋に持って帰る。
 お盆を過ぎると、めっきり朝の蝉の声も音量が下がってくる。地面に目をやると蝉が仰向けにころがって、蟻の行列が続いている。
 夏の終わりを感じる頃。
 花は冬。枝に黄色い花を沢山付ける。その花の形は一風変わっていて、花びらはまるでシュレッダーにかけて少し縮れた紙片のようなのが四片、枯れ枝の至る所に乗っかっているような感じ。自然の意向は人には計り知れないと、つくづく感じる。そんな不思議な花ゆえ、人の気に留まる。だから、満作というと冬の木。でも、葉の美しさだって格別。産毛が密に生えていて、その触り心地の良いこと。でも、これは満作なりの防虫対策らしい。毛虫に食べられることはない。
2009年8月21日 12:00 |コメント0
絵:杉本歌子 プロフィール
1967年2月13日、京都生まれ。京都芸術短期大学美学美術史卒。現在、京都市指定有形文化財となっている生家の維持保存のため、財団法人奈良屋記念杉本家保存会の学芸員・古文書調査研究主任に従事。植物を中心にした日本画を描いている。画号「歌羊(かよう)」。

受け継いだ京の暮らし 杦庵の「萬覚帳」

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