ナンバンギセル 左京区鴨川沿いにある京都府立植物園の植物生態園区域は、自然状態での森林と草花がいっぱいで、とくに背の低い草花の宝庫です。
 残暑厳しい日が続く中で、スズムシバナ、フセンカズラ、ヒオウギ、ミズヒキなどが可愛い花をつけています。ススキの足下をそっと探すと雑草の中に写真のようなナンバンギセルの花を見つけることができます。ニョッキと花柄をもたげて先端は横向きに赤紫色の筒状の花を咲かせています。その姿が南蛮(西洋)の煙管(きせる)に似ているからナンバンギセルと名付けられています。
 ナンバンギセルはハマウツボ科(寄生植物が多く葉緑素はまったくないので緑の葉っぱもない)に属してススキ、ミョウガ、サトウキビやシランなどの根っこに寄生します。茎は極端に短く地下にあり、花柄が伸びて高さ10~2センチほどの寄生植物。仲間にはハマウツボ、オクニやオオナンバンギセルなどがあります。中国、東南アジアやインドに広く分布しています。
 ところで、根っこに寄生して寄主から栄養分を吸収して成長するのでススキなど雑草の生長を阻害する生物的除草効果がある反面、陸稲(おかぼ)にも寄生して収穫を減らす被害もあるともいわれています。
 和名はオモイグサ(思草)と呼ばれ万葉集にも詠まれ、花がうなだれ、物思いにふけっているように見えるところから名付けられています。(仲野良典)
 「道の邊の 尾花が下の 思ひ草 今更々に 何をか思はむ」(出典:中央公論社刊・『萬葉集注釋』第十巻)