京大職組、教授らが集会 京都大学が設置の方針を決めた「国際高等教育院」に関して、学内から反対の声があがっています。国際高等教育院は、教養教育を一元的におこなう組織として、来年4月からの開設が松本紘総長を委員長とする検討委員会によって推進されています。しかし、教育院が、研究ではなく教育に専念する教員を前提とした構想であることや、教授会が無く、人事権を総長が握ることなどに対して、「学部自治を侵害する暴挙」「教養学を軽視している」と、あちこちから批判の声が噴出しています。また、総合人間学部や人間・環境学研究科の教員約100名を教育院に移動させる構想であるため、9月27日に、人間・環境学研究科教授会において、「全学共通教育を担保してきた人間・環境学研究科と総合人間学部の実質廃止」であり、「同部局の教員への差別化の導入」だとして、反対の決議が採択されています。 
 総合人間学部や人間・環境学研究科を中心とする教員有志の署名活動も始まっています。12日から吉田南食堂前毎日おこなわれている署名活動では、約500筆の署名が集まり、今後は全学に向けて訴えていくとのことです。
 11月15日、京都大学職員組合人間支部が「「国際高等教育院」構想と総人・人環の再編案を問う」と題した集会を行い、約150人が参加しました。基調報告をした総合人間学部教授の間宮陽介氏は「目玉商品を作らなければ国から補助金が出ない。だから各大学は目玉商品をこぞって作る」という構造を批判し、「何でも制度を変えればうまくいくものではない。改善は現場の教員や学生の議論を経て行うもの」だとしました。
 岡真理教授は、教育院構想に関連して、「グローバルな人材育成」などが多く語られる現状について、「ネイティブスピーカーに習って英語ペラペラなだけの、単にビジネスに役立つ人物を作ろうとしている。こんなのは本当の意味でグローバルとは言わない。別の世界の見方を学ぶのが教養であり、西洋だけやればいい話ではない」と酷評しました。
  現場の議論が無いままに方針が決まったことへの批判も数多くあります。多くの教員が今の教育院構想を知ったのは、9月20日に全教員へ送られた「総長メール」でした。間宮陽介氏は、総長メールについて「こういったことをやるから、よろしくという内容で、教授会でもメールを見て初めて知った人ばかりだった。教育院構想の内容だけでなく、トップダウン式の意思決定も問題だ」と語りました。
 16日には、学生・院生を中心に、大学に対して情報の開示や教育院構想への反対を訴える、「京大学生会議」が発足しました。ツイッターなどで集まった約170人の学生が、今後の方針などを議論し、署名活動や、大学へ正式に抗議することが決まりました。参加者の学生は、全学共通科目の履修登録コマ数の制限が検討されていることに触れ、「学生の自由な選択を減らすもので、全学的な問題だ」と述べました。
 京都大学は今、大きな岐路に立たされています。トップダウンの意思決定がまかり通る、学問や大学の理念を無視した「大学改革」に突き進むのか、それとも、自由な学風や、学問の自由を発展させていくのか、大学へ学生・院生や現場の声を届けるのは今しかありません。(椥原正)