神奈川県の米軍横須賀基地を母港にするイージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」が14日朝、舞鶴市の舞鶴港に入港したことに対し、14日、安保破棄京都実行委員会、京都平和委員会、原水爆禁止京都協議会、京都母親連絡会の4団体は連名で、山田府知事宛に「入港反対」の態度をとるよう、質問と要請を行いました。
 質問・要請の申し入れ書の全文は次の通りです。


 米第7艦隊所属のイージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」が、14日から海上自衛隊舞鶴基地に入港すると伝えられています。
 私たちは、米艦の舞鶴への入港に対して京都府知事が「入港反対」の態度を表明するよう要請します。
 イージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」は、ネットで検索すると、環太平洋合同演習(リムパック)に参加したり、1995年ごろ西太平洋に配属され、ペルシャ湾にむけ出航、アメリカ海軍中央コマンドで展開、そのとき、航空戦、対地上戦、海中戦、および攻撃指揮艦を務めた。さらに、対イラク戦では第五艦隊特別遠征対策本部の一部となったと記されています。そして、横須賀を母港とする第七艦隊に所属し、航空戦指揮艦を務めるなど、まさに、戦争遂行の現役艦であり、こうした危険な艦船の舞鶴入港は許せず、東北アジアの平和と安定を求める世論に挑戦するものとして断じて認めることはできません。
 かつて、軍港であった舞鶴港が、戦後、日本国憲法のもとで、二度と侵略の港にしないと決意して「旧軍港市転換法」を制定した港としてその基本姿勢を守っていくことが求められています。
 そこで、大切なことは、港湾の管理責任者としての京都府知事が、府民と舞鶴市民の平和と安全のために、米艦の入港は当然、拒否すべきものと考えるものです。これらの問題での態度と対応に間違いのないよう強く要請するものです。
 以下、いくつかの質問と要請をおこないます。
1、米艦の入港についての基本的な態度について
 港湾の管理権は自治体にあり、舞鶴港湾の管理権は、京都府知事がもっています。日本の船舶はもちろんのこと、アメリカを含むすべての船舶の入港・出港の可否は港湾管理者によって決定されます。
 京都府は、この間、米艦の入港にあたって、「自衛隊や造船などの桟橋や施設は、府の管理する所ではない」「米艦入港は、国の専決事項で関与できない」「日米安保条約・地位協定などの条約が優先される」などを理由に入港を容認してきました。
 安保条約・地位協定などが存在していても、港湾の管理権は自治体にあるのが原則です。地位協定五条は「入港料を課さないで日本国の港に出入りすることができる」としています。しかし、地位協定は「入港料を課さない」ことを定めただけのもので、入港が「自由勝手」というなら、日本の港のすべてが米軍基地になってしまいます。
 この間、港湾の管理権を十分発揮されているのかどうか、ご回答下さい。
2、イージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」の安全性や「核持ち込み」について
 舞鶴への米艦入港時、問題になったのが、「核兵器搭載可能艦」の疑惑で、当時、荒巻禎一京都府知事は、核兵器の持ち込み問題について、次のように答弁しています。
 ◯知事(荒巻禎一君) 内山議員の再質問にお答え申し上げますが、・・・・・・・、非核3原則につきましては、国の方も3原則を守ると言って約束しているものでございますので、私はこれを信じて対応していきたいというふうに存じております。(1999.02.17 : 平成11年2月定例会[第4号])府議会議事録より。
 今日、核密約問題が露わになっていますが、いまも「政府を信じて」対応することで良いのでしょうか。危険物を満載した艦船の入港を、調査・検査もせず、問い合わせもしない対応は許せません。
3、「米兵犯罪」、府民の安心・安全は大丈夫か
 2006年1月3日、出勤途上の女性が米兵に襲われ命を奪われた「強盗・殺人事件」、07年、岩国で「集団暴行事件」、08年3月、沖縄での中学生暴行事件、08年3月、横須賀でのタクシー強盗殺人事件などなど、米兵による犯罪が後をたちません。防衛省の資料でも、1952年から2006年までに米兵が起こした事件・事故は、20万件を越え、日本人1081人の命が奪われています。同時に重大なことは、犯罪の発生件数が、アフガニスタン戦争やイラク戦争などと深く関わっていることです。
 2005年2月13日の夜、西舞鶴で帰宅途中の女子中学生が米兵らしい外国人数名のグループに取り囲まれる事件(府は「事案」としている)が発生しました。当時、府議会で、次のような知事の答弁があります。
 ◯山田知事 梅木委員の御質問にお答えいたします。
 府民の安心・安全についてでありますが、米艦船フィッツジェラルドが入港中におきましては、舞鶴市内では地元警察署におきましてパトロールの強化等が行われておりましたけれども、2月13日の午後10時半ごろ、JR西舞鶴駅におきまして、米兵によるものかどうかは断定はできないようでございますけれども、女子中学生に対する外国人による声かけ事案があったと承知しております。
 委員御指摘の事案につきましては、被害届も提出されておらず正式な事件とはなっておりませんけれども、いずれにいたしましても、府民の安心・安全を脅かす事案が生じないよう、今後とも関係機関と連携し、対応してまいりたいと考えております。(2005.03.18 : 平成17年予算特別委員会 総括質疑)府議会議事録より。
 ここで重要なことは、「今後とも関係機関と連携し、対応してまいりたい」という内容が大切で、真に「府民の安心・安全」になっているのか、質問します。
4、港湾の軍港化は許されません。
 イージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」の入港にあたって、「おしらせ」では、「ボランティア活動とスポーツ交歓」となっていますが、一番重要な軍事協力が明らかにされていません。
 舞鶴海上自衛隊に属する護衛艦「あたご」や「みょうこう」(イージス艦)などが米艦と連携することによって、舞鶴がアメリカ戦略の最前線基地に変貌する危険性をもっています。米駆逐艦の日本海での行動と舞鶴への入港は、東北アジアの平和と安定にとって有害です。
 大切なことは、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇、武力の行使は、国際紛争を解決する手段として永久に放棄する」という憲法の平和原則を堅持し、東北アジアの文化・経済交流の発展に力をそそいでこそ、未来への確かな方向が開けるのではないでしようか。舞鶴が、アジアへの侵略の拠点となった歴史を再現させてはなりません。
 舞鶴を平和と友好、豊かな文化と経済交流の港にすることは、舞鶴市民のみならず京都府民の願いです。
 舞鶴港の管理責任者である京都府知事が、府民の生命と安全を守り、戦争への危険を拒否する立場を貫くならば、米艦船の入港を止めることができるのです。憲法と港湾法を厳守し、「米艦船は入港させない」と確固とした姿勢をつらぬくことを強く求めます。

2009年9月14日
安保破棄京都実行委員会
京都平和委員会
原水爆禁止京都協議会
京都母親連絡会