医療+暮らし

百日咳(ひゃくにちぜき)(1)

大人の人も注意しましょう

2000年以来の流行

百日咳患者の年齢分布

小児科の病院診療所で調査に登録しているところ(全国約3000カ所)で診断した百日咳患者さんの年齢別割合。小児科で親などの大人を百日咳と診断している数を表しており、日本での大人の患者数が増えている統計とは異なります(「国立感染症研究所感染症情報センター月報(IASR)」より)

 2007年の香川大学、高知大学での集団感染はニュースにもなったので、覚えている方もおられると思います。特徴は、大人の患者さんが増えてきたことです。麻疹(はしか)と同じく、幼いころの予防接種の効果がだんだんと薄れてしまうことがわかっています。今年も百日咳は各地で流行しており、2000年以後では最も多い年になりそうです。

あかちゃんは命の危険

 あかちゃんが感染したとき、最初の症状は、ふつうの咳(せき)、鼻です。熱はでません。数日から2週間たつ間に、ひどい咳こみ(スタッカート)が始まります。また、咳こんで息を吸えずに、咳の合間に必死で息を吸うので「ヒュー」とのどが鳴ります(レプリーゼ)。ひどくなると呼吸困難を起こし、低酸素脳症を起こしたりして、命にかかわります。ふつうの咳、鼻が出ている時期をカタル期、ひどい咳が出る時期を痙咳(けいがい)期と呼びます。

大人でもかかる

 大人は咳が長引いても、病院に行くひまが無いという人が多いと思います。大人の百日咳は、あかちゃんのようにはひどい咳にならないことも多いようです。 また、リンパ球の増加などの血液検査の特徴も、大人では明らかではありません。3~4週間、咳が長びいた患者さんをしらべると、15~30%が百日咳であったという調査報告があります。このことから、百日咳の患者さんが結構多いということと、3~4週間も咳が続くのに診断がついていない人が多いことがわかります。

ひどくなる前に

 原因である百日咳菌は、エリスロマイシンやクラリスロマイシンなどのマクロライド系の抗生物質に弱く、内服して数日で菌は排出され、なくなります。が、百日咳毒素などの作用で咳がひどくなってしまうと、菌はいなくなっても咳は続きます。  病気が始まって、ひどい咳のでる時期(痙咳期)になる前に薬を飲めば、ひどい咳にならずに治るわけですが、ひどい咳になる前には診断はつかないことが多いのです。なお、診断がついた場合には、再燃・再排菌を防ぐために2週間内服することが勧められています。  ひどい咳になってしまった場合の治療法は残念ながら、あまりありません。文字通り100日のあいだ、苦しい咳が続きます。一度落ち着いたように見えても、別のかぜをひいたときに、同じような咳がでます。ひどい咳のために肋(ろっ)骨を骨折する人すらあります。

家族の中での伝染力

 家族の中での伝染力は強いようです。あかちゃんの百日咳のかなりの部分は、家族のだれかからうつったものと考えられています。咳が長びいているときは、熱が無くても、大人もちゃんと受診すること、受診するときには家族みんなの咳の様子を説明していただけると、小児科医としてはうれしいと思います。  次回は百日咳の歴史をさかのぼり、ワクチンについて説明します。(つづく
京都民医連中央病院 小児科 出島直
2009年9月28日 12:19 |コメント0

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