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和布ものがたり

布の思い


綿、帯地、帯じめ、大島(茶パッチ部分)等使用

 毎日、暑い日が続きます。年齢のせいか体にこたえます。25年余り、布とかかわり対話しながら、今日まで来ました。最近、箱に埋もれていた布達を整理し、ひと目で全部を見る事が出来るようにしました。すると「布のおしゃべり」が一層強くなり、私に語りかけてくる事が多くなりました。
 今年も8月6日が近づいてきました。「和布ものがたり」を見ていただいている巻田利髙様から頂いた本「ひろしま」(石内都著)をもう一度ゆっくり見たくなりました。広島の原爆資料館に収められている遺品の中から、被爆された方が身につけていた洋服を中心に収められている本です。着物地をリフォームして作られている洋服が多く、絣や綿、ちりめんが夏物として使用され、手ぬいやミシンで、ていねいに縫われています。お母さんの着物を娘さんの洋服に縫いかえたのだろうと思うと、代々布が大切にされていた事が伝わってきます。
 1945年、広島に原子爆弾が投下され、約20数万人の人々が亡くなりました。そして、20数万をはるかに越える布達の命も…。亡き母の着物、父の作業着、子供達の洋服等…。それらの布から、よみがえる顔や生きていた頃の思い出…。
 私は亡き父の仕事着と、母の洋服を一緒にしてあげて、身近な見える所に置いています。見つめていると、幼い頃の思い出がよみがえってきて涙がボロボロ流れる事もあります。

 あなたも身近に亡くなった方々の―布のおしゃべり―に耳を傾けてみませんか? きっと広島で消えていった布達のおしゃべりも聞こえてくるかもしれません。その時「広島の思い」に耳を傾けてください。

 8月6日は、私の誕生日でもあります。きっと布達がおしゃべりしにやってくる事でしょう。